第5章 今後の課題


8.七つの課題
徳島大学教授
吉田 敦也
  1.集合型がいいという声
     今回、放送を終えた直後に受講者と懇談会を持つ機会に恵まれ、エル・ネットに対する意見などを交換したが、その際に、最も印象的だったことは、「家庭では、じゃまされず一人で学習に専念する場所や機会が少ない。したがって、教室を用意し、仲間と一緒に、講師と対話しながらの学習の場を提供してくれるエル・ネット「オープンカレッジ」はとてもいい」という69歳男性の意見である。「高品質な衛星放送」といえども、会場のテレビの状態や大人数で見る場合の画面サイズなどによっては、必ずしもその効果が発揮されているとは思えない(会場のうしろの方の人はまともに見れていない)ということもありそうだが、それに関係なく、そうしたこととは異なる面でエル・ネット「オープンカレッジ」が評価されていることは着実に利用され、他のメディアでは得がたい利点としたいところである。

  2.イメージメイクへの努力
     第二の声として「エル・ネットの放送を今回はじめて知った」という意見は多い。特に、主催者(提供者)にもその声は多い。したがって、エル・ネットに関する調査などしても、どう対応していいかわからない状況に陥っている部署がある。プリミティブな手法ではあるが、エル・ネットを印象づけるテーマソング、番組おなじみのスタジオ風景、いつも登場する「エル・ネット先生」などをつくることもよいのではないか(セサミストリート戦略)。

  3.番組案内の工夫
     エル・ネット「オープンカレッジ」専用のWebページを立ち上げ、カウンターを設置したら、少ないながらも着実にアクセス数が上昇することが明らかとなった。また、当該の番組の放映日に向けてアクセス数が上昇することも判明し、番組情報の探索、あるいは、予習のため(資料収集)に、受講者、潜在受講者、関係者が訪れることが示唆された。したがって、紙媒体、メルマガに加えて、エル・ネット公式サイト(文部科学省)、エル・ネット「オープンカレッジ」公式サイト(協議会)の一層の充実と番組の情報化が効果的であるといえる。同時に、各番組の制作者に対して、案内、告知、交流用のページを一時的にも立ち上げることを推奨するのも一案かと思われる。

  4.番組制作に関するアイデア
     番組制作は、パワーポイントプロデューサー程度でも、十分おもしろい、説得力のあるものが作れることが、今回、種々の試みに参加して、明らかとなった。評価試験をしていないので、客観的な論証はできないが、ぜひともそれをやり、簡単で、そして心理的負担の少ない、かつ、教育効果を保障できる映像教材ビルダーをエル・ネット発として提供するべきである。eラーニング時代のニーズに合致した取り組みと思う。

  5.休み時間の校庭ドッジボール型ファシリテータ大作戦の展開
     今回、エル・ネットクラブ徳島を発足させた。面白半分に自作・配布したエル・ネット手帳などがシニア層に意外にウケテ驚いた。番組内容がたまたま受講者の学習テーマと一致したものであったことが幸いして、継続学習や学習コミュニティ形成につながったものと分析するところであるが、それは言い換えれば、放送番組だけで、受講者の学習意欲をつなぎとめ、継続への動機付けへとリレーしていくのはやはり難しい面がある、ということではないだろうか。したがって、学校でいうところの「休み時間」をいかに魅力的にするか、あるいは、毎朝のラジオ体操みたいな形をつくって、有用なすごし方を提供する、いわばイベント・ドリブン型の試み、あるいは、学習コミュニティワークを若干でもエル・ネットカリキュラムに取り入れることを提案したい。

  6.リアルタイム質疑応答システムの効用
     リアルタイム質疑応答システムへの評価、評判はやはり高い。パソコンを操作しリアルタイム質疑応答システムを使えるだけの技能を持った人であるからそういう反応が出るという考え方も当然成り立つが、同時に、講師との生の交流ができることが誘引になって学習が進むことも当たり前のことで、講師と受講者との交流、受講者同士の学習交流を積極的に開発・進展させる工夫は何事にも勝るものと感じた。

  7.提供者、コーディネータの育成、啓発プログラム
     3月6日に代々木で開催されたエル・ネッター育成をめざしたワークショップ(恣本視聴覚教育協会主催)はいろいろな意味で心に残った。番組を制作する立場にある人、それを題材に講座を企画する人などに対して、活用法や視点づくりを提供・支援するいわばエル・ネットプロフェッショナル向けのプログラムは今後において必須と思われた。徳島からの受講者も価値を認め、たいへん喜んでおられた。