第5章 今後の課題


7.双方向通信について
独立行政法人教員研修センター事業部研修事業第二課課長補佐
石島 利男
  1.はじめに
     今年度のモデル事業では、ほとんどの事業で質疑応答の際に、テレビ会議システム等を利用し双方向通信が実施された。
 一つの講座に参加しているという一体感を有するためには、双方向通信は極めて有効な手段であると思われるが、さまざまな問題点もあり、ここではその問題点と留意事項を簡単にまとめてみたい。
  2.双方向通信の事前準備
     双方向通信を実施するに当たっては、講師を含めそれぞれの会場の担当者間で十分な打合せを行い、事前の準備を整える必要がある。この事前準備を確実に行うことが双方向通信の成功の鍵である。
  (1)進行表の作成
     出演者、テロップ等を含め、講座全体の流れを時系列的にまとめた進行表を作成し、それぞれの会場の担当者はこの進行表に基づき、当日の講座の進行に当たる。進行表については特に定められた書式はないが、こちらで使用しているものがあるので、希望があればお渡しする。
  (2)機器の確認
     できれば双方向となる会場の間でリハーサルを行い、双方向通信に使用する機器のみならず、講師が使用するOHC、パソコン等についても事前に動作確認を行う。その際、マイクの位置によっては「音が回る」という現象を起こす一因ともなるので、会場の設営についても確認が必要である。
  (3)連絡回線の確保
     本番の際、特にライブの場合は、担当者同士が連絡を取り合う回線を確保しておく必要がある。
 1対1の場合は携帯電話の普及もあり回線の確保にはそれほど問題はない。1対Nの場合は、同時に何局かと通話可能な回線を利用する方法があるが、経費の面で負担がかかることもあり、一考を要する。

  3.双方向通信のメディアについて
     双方向通信を実現するメディアとしては、当面、電話、FAX、インターネットチャット、テレビ会議システム、エル・ネットがある。
 この中で、衛星通信の特徴である一体感、臨場感を確保するためには、他会場の映像・音声がメイン会場内に流れる電話、テレビ会議システム、エル・ネットの利用がベターである。

  (1)電話
     他会場からの電話の音声を、自会場内に拡声して流すためには「テレピック」という装置が必要である。この装置は1台三十数万円するもので、一般的には普及しているとはいえないが、近く(財)衛星通信教育振興協会が無償で貸し出しを開始するので、実験的に使用してみることをお勧めする。

  (2)テレビ会議システム
     各機関等にかなり導入されているが、必ずしも同一のシステムではない。1対1の場合は、異なるシステムでも接続にほとんど問題はないが、1対Nの場合は接続できないケースもあり、今後詳細な検証が必要である。

  (3)エル・ネット
     他のメディアに比して、映像・音声ともに最高の質を確保することができるが、一定程度の技術レベルが要求される。各VSAT局の職員がこの技術を習得しても、人事異動により担当者が替わってしまい、しばらく使用されないケースが多々ある。
 こうした弊害を解消するため、実際に衛星回線を接続し、VSAT局間での定期的な操作講習会の開催が望まれる。

  4.おわりに
     最後に、今回初めて島根大学でモデル事業の収録現場を見学させていただいた。
師走の、しかもあいにくの天候にもかかわらず、2日間に渡り多くの受講者が集まり、質疑応答まで熱気あふれる会場の雰囲気であった。これは島根大学の関係者の日常的な活動の成果の現れであろう。
この島根大学のケースのように、メイン会場に多くの受講生が集まることが衛星利用の評価を高めるポイントの一つであると思われる。
 以前、受信会場で衛星利用についてのアンケートを取った際に、メイン会場の受講者が多いほど衛星利用の評価が高まるという傾向が見られた。これは全国各地で同時に番組を受信することにより、一体感が生ずるためであろう。
 メイン会場に受講者が多い場合は、メイン会場からの配信映像に、時折会場の全景を入れるなど、映像面での工夫が必要である。