第5章 今後の課題


4.エル・ネット「オープンカレッジ」の特徴を生かした活用とサービス
淑徳短期大学教授
浅井 経子
  エル・ネット「オープンカレッジ」には独自の特徴があるように思われる。今後のあり方を考える際には、学習者のニーズを検討しつつ、その特徴を生かすように配慮することが大切なように思われる。ここでは、これまでの成果からエル・ネット「オープンカレッジ」の特徴を幾つか抽出し、今後の課題について考えてみることにしよう。
  1.集合学習の機会としての活用
     エル・ネット「オープンカレッジ」の受信局は社会教育施設等であるため、集団視聴による集合学習で活用するのが最も適しているように思われる。もちろん、ビデオを貸し出している施設もあり、自宅での学習ができないということではない。
 集合学習のよさとしては、共に学ぶ仲間がいるので緊張感を持続できること、学習時間が拘束されるため学習に集中できること、などがあげられる。さらに、視聴後に話し合い学習等を取り入れれば、受講者は一層の充実感を得ることができるであろう。

  2.主催事業や自主講座に組み込んでの活用
     これまでモデル事業で行ってきたように、社会教育施設等の主催事業や学習グループ等の自主講座として活用したり、あるいはそれらに組み込んだりして活用することが望まれる。特に教育・学習資源にあまり恵まれない地域にあっては、多様な事業や講座を実施するのが難しいので役立つに違いない。もともとエル・ネット「オープンカレッジ」は、学習ニーズの高度化に応えるために、大学等のない地域にも大学公開講座を遠隔で提供しようというものでもあった。
 その場合、成熟社会にあっては学習者の意識も変わり、能動的な学習や参画・参加型の学習を好む傾向があるので(1)、視聴後に話し合いの時間や地域講師による講義と討議、演習等と組み合せたりする工夫が必要のように思われる。eラーニング・システムの講座にあっては遠隔講義と対面による講義を取り入れたハイブリッド型の講座が望ましいといわれているが、エル・ネット「オープンカレッジ」の場合もそれは同様であろう。さらに、講座の内容にもよるが、エル・ネット「オープンカレッジ」の視聴後に地域活動やボランティア活動等の体験活動を行うプログラムがあってもよいように思われる。

  3.高齢者を主たる対象にしたサービス
     放送時間やエル・ネット「オープンカレッジ」を必要とする地域の人口構成を考えると、当面の主たる対象は高齢者であろう。したがって、高齢者のニーズを考慮し、高齢者にあったサービスを考える必要がある。特に、生きがいと社会貢献から成る第二の人生活動に寄与する内容、方法、形態の検討が重要であるように思われる。サービス面でも、当面は活字の大きい印刷媒体による情報提供等の高齢者にやさしいサービスが求められる。
 なお、平成7年に「高齢社会対策基本法」が制定され、平成13年末に新『高齢社会対策大綱』が閣議決定された。その中で「学校における多様な学習機会の確保」があげられ、高等教育機関による高度で実践的な学習機会の提供が謳われている。エル・ネット「オープンカレッジ」をその具体策の一つに位置づけることにより、財政的基盤を確保することはできないものであろうか。
  4.地域の活性化に役立つ活用方法の開発
     エル・ネット「オープンカレッジ」を必要とする地域は、高齢化、過疎化が進んだ地域であり、ともすれば産業の発展があまり期待できない地域であることが考えられる。そのため、多少なりとも地域の活性化に寄与する活用方法の開発が望まれる。
 例えば、社会教育施設等の受信局を中心にエル・ネット「オープンカレッジ」を活用・運営する会員制の組織をつくり、低額の会費と低額の受講料を徴収して、交代制の有償ボランティアがその組織を運営すれば、社会貢献とわずかな収入確保の道ができ、地域の活性化につながるのではないかと考えられる。
 エル・ネット「オープンカレッジ」自体のシステム構築が課題となっているが、地域の活性化に寄与するシステムのあり方を検討することも大切なように思われる。

(注)
(1) 例えば、「あおもり県民カレッジ」はモデル事業等としてエル・ネット「オープンカレッジ」の双方向講座を数年間にわたり実施してきたが、受講者には適切な質問をすることにより自分たちも講座に参加しているという意識が生まれ、それが高い満足感を生んでいる。その分析については、エル・ネット「オープンカレッジ」を活用した遠隔学習の効果に関する研究会『エル・ネット「オープンカレッジ」を活用した遠隔学習の効果に関する実験的研究報告書(平成14年度 (財)文教協会研究助成)』平成15年3月を参照のこと。