第5章 今後の課題


1.エル・ネット「オープンカレッジ」を活用した学習への支援
大学評価・学位授与機構評価研究部教授
山本 恒夫
   エル・ネット「オープンカレッジ」で講師が講義をし、それを放送することについては、大体いくつかのパターンも出来てきて、ある程度軌道に乗りかかったといえるのではないだろうか。勿論講義をする側の問題がすべて解決したわけではなく、むしろそこに課題が山積していることがわかったといった方がよいのかも知れない。たとえば、講師の場合、講義の仕方や休憩の取り方、テキストの作り方、質問の受け方等は、ライブで同時双方向の場合とそうでない場合ではかなり違うので、それをどうしたらよいかということが、問題としてかなりはっきりとしてきたように思われる。
 それに比べて、学習者側の問題はまだあまり検討がなされていない。たとえば、「オープンカレッジ」の放送を活用した学習はどうしたら効果的に行うことが出来るかという、一番根本的な問題でさえ、ほとんど検討されていない。そこで、ここでは、そのような学習者の学習方法の課題をいくつか挙げておきたい。

(1)予習の支援について
    学習のプロセスに沿っていえば、まず第1に予習の仕方のことがある。
「オープンカレッジ」での学習者には、テキストを取り寄せ、予習をしようとする人も多い。テキストを一通り読むだけでも効果はあるに違いないが、予習の仕方や講義をきく際に留意すべきことなどがテキストに入っていると、予習もしやすいであろう。今後、そのような支援も考える必要がある。

  (2)教室での受講の支援について
     公民館や生涯学習センターなどで「オープンカレッジ」受講するに当たっても、学習の効果を高めるような工夫が必要である。「オープンカレッジ」では、画面を通して比較的長い時間、講義を聞かなければならない。そのことが、成人にとってかなりの負担となっている。
 しかし、学習者によってはただ聞くだけではなく、積極的にノートをとったり、テキストにメモを入れたりして学習効果をあげている。そのことが一般的に行えるように、テキストの各頁に質問・疑問・メモ欄を設けるといった配慮も、「オープンカレッジ」での学習を支援する1つの方法であろう。
 また、講義受講後に、学習者同士で話をしたいという希望が多い。そのための時間・場所を取ることも、当たり前のようでありながら、なかなか行われておらず、講義を聞くだけで終わっていることが多い。受講にかなりの時間を取られるので、後は自由な懇談とし、そこでは必要があればビデオで今の講義の一部を確認することも出来るようにする。このように、受講することと学習者の懇談をセットにした学習方式を考案することがあってもよいように思われる。
 さらに、「オープンカレッジ」では、個人で都合のよいときにビデオを見ておき、後でグループで集まって学習することもある。その場合には、担当を決めて講義の要約を作り、それを手がかりにすると効果的である。要約作りはあまり固定化しない方がよいので、要約の作り方のマニュアルがあると多くの人が担当しやすくなる。これからは、そのようなことも考える必要があろう。
  (3)復習の支援について
     「オープンカレッジ」の利点に、ビデオやオンデマンドで復習出来ることがある。講義内容によっては、復習にかなり力を入れたいものもあるに違いない。したがって、ビデオの貸し出し体制や、いずれはオンデマンドの利用体制を整備し、そのような要望に応えられるようにすることも期待される。
 これまでのところ、「オープンカレッジ」受講後の復習については考えられていないが、受講後にそれを整理し、ファイルをしたりしていけば、その後の学習に役立つ。それは個人の創意工夫でやっていけばよいとはいえ、整理法、ファイル法、あるいは個人的なデータベースの作成法などについての一般的なパターンを紹介するだけでも、隠れた支援になる。
 知識や技術の蓄積は大事なので、今後、このような復習の支援も視野に入れておく必要があるように思われる。