第4章 新たな取り組みについて

4.eラーニングの取り組みについて
   エル・ネット「オープンカレッジ」の今年度の新たな試みとしてeラーニングサイト「eラーニングステージ(http://www2.opencol.gr.jp)」を平成14年10月より試験的に運用開始した。オープンカレッジの公開講座116講座の内、10講義について事前/事後の学習を支援するための学習コンテンツを掲載し、Q&Aや課題、学習チェックシートにより受講者本人が講座の理解度を確認できる仕組みを提供している。ここでは実際の運営方法や利用状況を含めて、「eラーニングステージ」の試験運用結果を報告する。

 

  1.eラーニングステージの役割
   
 「eラーニングステージ」は、エル・ネット「オープンカレッジ」とeラーニングを融合した新しいサービスであり、従来からの衛星放送番組「オープンカレッジ」を支援し、受講者により充実した生涯教育の機会を提供することを目的としてスタートした。
 「eラーニングステージ」では、衛星放送番組による公開講座の案内や、事前学習や復習、講師への質問、学習者同士の相互交流などをサポートし、受講者の学習ニーズに対応することを目的としている。
  2.概 要
     平成14年12月から平成15年3月までの公開講座の中から10講義を対象として、下記の内容を提供した。講座予告編は教材作成ソフトウェアを利用し、講師自身が製作できるものとした。作成した資料の上に音声と手書き文字を同時並行でレコーディングし、記録した内容を時系列に再生できるので、講座内容がわかりやすく紹介できる。


 <eラーニングステージの講座内容>
 ・講座の予告編
 ・参考資料の紹介
 ・課題(記述式)
 ・学習チェックシート(選択式)
 ・放送日程のご案内
 上記学習コンテンツのほかに、講師への質問や、学習者同士の相互交流のためのサークル運営、受講者同士のメールが利用できる。公開講座の放送予定日の1か月前を目安としてeラーニングステージに講座を開講し、放送内容の確認から事前学習、復習などに活用できる。
 運用システムは、Webサーバーのほかにeラーニングの専用サーバーを立て、その中で受講者管理、教材管理、学習管理及びコンテンツ配信を行うものである。受講者側のパソコンの必要環境は下記のとおりである。

<受講者側の必要環境>
CPU Pentium-166MHz以上(PentiumU以上推奨)
メインメモリ 64MB以上(128MB以上推奨)
空きHDD容量 500MB以上
OS Windows98SE/Me/2000/XP
WEBブラウザ IE 5.5SP2以上(IE 6.0以上推奨)
モニタ解像度 1024×768×16bit以上
ビデオメモリ 8MB以上
サウンドカード サウンドブラスタ互換の全二重サウンドカード
その他 ヘッドセット or スピーカー
通信回線 ISDN/ADSL/128kbps以上の専用線

 
  3.サイト運営方法
     サイトの立ち上げ準備から本稼動までは下記のような流れで作業を進めた。「オープンカレッジ」の放送予定日の約1か月前までに「eラーニングステージ」での講座開講を目安として作業を進めた。コンテンツ製作については、講義製作ツールを使用し、講師自身で製作する場合と、講義素材を運営管理担当者に提供し、運営管理者側で製作する場合の2通りで行った。

<運営準備の流れ>
 参加要請のアンケートを送付 平成14年8月末
 参加希望の10講義を対象講座として決定 平成14年9月
 サンプルコンテンツの製作   〃
 サイトに基本情報を登録後、仮オープン   〃
 詳細内容を参加者へ通知   〃
 製作方法についてのアンケートを参加者に発送   〃
 各講師のコンテンツ製作 随時
 「eラーニングステージ」本格始動 平成14年10月
 準備完了講座から順次開講 随時
 全10講義開講 平成15年1月

開講講座リスト 講座選択画面 講義リスト
予告編画面 学習チェックシート画面 成績表


 受講者は登録したIDとパスワードでログインし、受講したい講座に受講申込みを行い、予告編や講義資料をもとに学習を進める。理解度をチェックするため学習チェックシート(簡単な択一形式の問題)や記述式の課題提出が可能である。学習チェックシートはシステム側で自動採点される。記述式課題については、講師もしくは管理担当者が模範解答をもとに採点する。そのほか、講師への質疑応答や参加者同士で特定のテーマでサークル活動も可能である。

  4.受講状況
     平成15年2月末時点での受講登録者数は250名であり、内109名(全講座合計の修了者数)が学習を修了している。講座あたりの平均受講者数は36.3名である。

  5.今後の課題
     本年度は試験運用として「オープンカレッジ」の公開講座116講義の1割に満たない10講義を対象に半年間運営してきたが、eラーニングへの取り組みに対して確実な手ごたえを得ることができた。受講者からの質問で、「受講したい講座がeラーニングステージにない」という指摘があったように、時間や空間の制限を越えてマイペースで受講できるeラーニングは、さまざまな環境にある個人に対応した生涯学習の実現には有効である。
 今後の課題としては、第一に対象講座の拡大があげられる。また、現在のコンテンツは事前/事後学習が中心であるが、受講施設で聴講できない受講希望者向け、あるいは再度受講したい受講者向けに本講義内容をサイトから閲覧できることが望ましい。
 その他にも同じ講座を学習している受講者同士が意見交換することも最新のeラーニング技術では可能であることから、受講者同士あるいは講師と受講者がテレビ会議システムなどを通して、リアルタイムにFace to Faceの座談会や討議を行うなど、ともすれば孤独になりがちな自宅学習の中でモチベーションを上げる方法の1つとして、今後の取り組みを検討していきたい。