第3章 モデル事業

4.受信者側に立った講座運営の在り方
青森県総合社会教育センター
社会教育主事 横内 清信
1.はじめに
   エル・ネット「オープンカレッジ」の実用化に向けて、発信者側の大学、受信者側の社会教育施設、実施機関の高等教育情報化推進協議会の三者が連携し、視聴者の視点にたった講義の構築が必要である。
 そのため、発信者としての大学は、テーマの精選、わかりやすい講義、視覚に訴えた講座作り、双方向性の確保という観点から、質の高い講座の発信に努めている。
 また、実施機関の高等教育情報化推進協議会は、新規講義の日程、内容、テキストの早期の提示については、年々改善を行い、ホームページ、メールマガジン、エル・ネット「オープンカレッジ」News等使って、情報提供を積極的に行っている。
 しかし、質の高い講義が地域住民へ提供されるためには、発信者側と実施機関の取り組みだけではなく、社会施設等の受信者側の体制整備が重要な課題である。そこで青森県総合社会教育センターでは、平成11年度から淑徳短期大学と連携しながら、受信者側に立った講座運営の在り方を探っている。
   
2.今年度の主な取り組み
(1)既存講座等への活用
   青森県教育委員会では、平成13年度、県内6教育事務所管内でエル・ネット「オープンカレッジ」を利用した講座を実施した。エル・ネット「オープンカレッジ」の講義を数コマ使って実施する講座は、生の講義と違い受講者の募集が難しいという担当者の反省があった。
 今年度は新たに講座を組み立てるのではなく、市町村で開催する講座(例えば家庭教育学級や公民館主催講座)等を利用し、エル・ネット「オープンカレッジ」の視聴をその中に組み入れて実施した。結果として多くの受講生を確保することができた。
 
【例】 三八教育事務所主催「あおもり学講座」(階上町家庭教育学級に組み入れて実施)
11月26日 「スポーツと社会福祉」         仙台大学 視聴 48人
12月10日 「高齢者の生き生きスポーツライフ」 仙台大学 視聴 42人
1月14日 「高齢期の食事と栄養」 講義 51人
(2)エル・ネット「オープンカレッジ」ビデオライブラリーの整備
   エル・ネット「オープンカレッジ」を利用した講座を組み立てる場合、講座担当者から事前に、講義内容を確認したいという要望が昨年度、出された。今年度、青森県総合社会教育センターでは、放送を録画し、担当者から問い合わせがあった場合、テキストとともに貸し出している。このような動きが他の社会教育施設でも見られるようになった。
【例】
    十和田市東公民館では、今年度、エル・ネット「オープンカレッジ」のライブラリー化を進めている。録画テープのリストを作成し、市広報を利用して、地域住民へ知らせ、視聴を進めている。また、ここを会場にエル・ネット「オープンカレッジ」の公開講座も実施している。
   
(3)生涯大学システムの活用
   
   生涯大学システムである「あおもり県民カレッジ」では、インターネット、テレビ、地区情報紙等を使っての生涯学習情報の提供を行っている。これらを利用しながら、県内6教育事務所管内で実施する『エル・ネット「オープンカレッジ」あおもり学講座』のPRを行い、受講生募集を実施した。
 エル・ネット「オープンカレッジ」の視聴者層は、あおもり県民カレッジ生と一致する現状を踏まえ、あおもり県民カレッジ単位認定講座として実施した。そのことにより、あおもり県民カレッジ学生の意欲を高めることにもつながった。
  【例】 西北教育事務所主催「あおもり学講座」(仙台大学)
開催日 学習内容 受講者 時間 単位数
11/13 高齢者の心とスポーツのかかわり 43人 1時間 1単位
11/21 高齢者のための生き生きスポーツライフ 19人 1時間半 2単位
11/22 スポーツレクリエーションのすすめ 32人 1時間 1単位
12/3 一般成人・高齢者の生活とスポーツ 44人 1時間 1単位
   
3.学習者グループによる新たな動き
(1)学習者グループ「東青学友会」の発足
   青森県では生涯学習の振興を図るため、平成9年10月に「あおもり県民カレッジ」という生涯大学システムをスタートさせた。
 あおもり県民カレッジは、個人参加が原則であるため、学生間の横のつながりが弱く、学生同士が情報交換をしたり、仲間作りをするのがあまりないというのが現状であった。このような状況の中で、「あおもり県民カレッジ学生が学ぶ喜びを分かち合い、共に高めあう場としての組織」が必要ではないかという声が出て平成11年に「東青学友会」が誕生した。
   
(2)あおもり県民カレッジによる東青学友会への働きかけ
   東青学友会が設立された時期に、あおもり県民カレッジでは、淑徳短期大学と連携しエル・ネット「オープンカレッジ」を利用した講座を試みていた。あおもり県民カレッジでは、学習者グループである「東青学友会」に積極的に受講を呼びかけた。
 平成11年度から13年度の3年間の淑徳短期大学と連携したエル・ネット「オープンカレッジ」には、単に受講するだけではなく、受付や会場作り等講座運営に協力する会としての体制も出来上がって行った。
   
(3)エル・ネット「オープンカレッジ」利用の試行的な実施
   東青学友会は、エル・ネット「オープンカレッジ」を利用した講座を受講し、運営補助を行いながら、講座運営のノウハウを蓄えてきた。そのノウハウを活用してエル・ネット「オープンカレッジ」を利用した自主講座を運営しようとする動きが生まれ、試行的に平成14年2月16日(土)に京都教育大学「みんなで国際理解を考える〜主としてケニアなどでの取り組みから」を視聴した。
 あおもり県民カレッジでは、東青学友会へ番組の放送予定の情報、視聴する講義のテキストの準備、視聴会場の確保等の支援を行った。
 これを機会に、東青学友会の平成14年度事業の中に、エル・ネット「オープンカレッジ」公開講座が組み込まれることとなった。
(4)エル・ネット「オープンカレッジ」自主講座の実施
   東青学友会主催の平成14年度エル・ネット「オープンカレッジ」公開講座は、5月から9月まで、月1回のペースで実施された。講座には毎回10〜15名ほど参加し、講座を視聴した後、お互いに感想や意見を述べ合う方法をとった。
 受講生募集から講座運営まで東青学友会が行ったが、あおもり県民カレッジでも、テレビの生涯学習情報提供コーナーを使い、講座PRに協力をした。
 自主講座を実施することにより、東青学友会では自分たちで学びたい内容を自分たちで選び、一緒に学ぶ仲間を集め、お互いに感想を述べ合う場を持つことが可能となった。
 
【東青学友会主催 平成14年度エル・ネット「オープンカレッジ」公開講座】
日      時 テ ー マ 大  学
5/28 10:00〜11:30 世界遺産白神山地の魅力 弘前大学
6/25 10:00〜11:30 歴史から見た親子関係と教育 筑波大学
7/20 14:00〜15:30 21世紀へ向けての新しいライフスタイル 淑徳大学
8/29 10:00〜11:50 北の文化−考古学と言語学から 札幌学院大学
9/19 10:00〜11:20 総合的な学習の現状と課題 岐阜大学
   
4.おわりに
   受信者側の立場からエル・ネット「オープンカレッジ」の利用方法を考えてきた。受信者側としては、「エル・ネット担当者の意識の向上」「エル・ネット「オープンカレッジ」の既存講座への活用」「生涯大学システムの活用」等を図っていくことが更に必要と思われる。
 今後は、受信者側の社会教育施設の担当者が学習者グループを育成し、その学習者グループが、エル・ネット「オープンカレッジ」を利用して自主講座を実施するよう支援していくことが、エル・ネット「オープンカレッジ」の利用促進につながるものと思われる。