第3章 モデル事業 3.事例


(6)愛媛県エル・ネット「オープンカレッジ」モデル事業報告
愛媛県エル・ネット「オープンカレッジ」モデル事業実施委員会
(愛媛県教育委員会生涯学習課)

1.趣 旨
   愛媛大学の公開講座「街がはぐくむ演劇、演劇がはぐくむ街」を県内の住民に幅広く提供するため、エル・ネット(教育情報衛星通信ネットワーク)を活用した効率的な遠隔教育の実施方法を考察した。
 
2.実施機関
(1)モデル事業実施計画の策定
   愛媛県エル・ネット「オープンカレッジ」モデル事業実施委員会を設置し、事務局を愛媛県教育委員会生涯学習課に置いた。委員会は、エル・ネット受信施設関係者3名、VSAT局である県総合教育センター1名、受信施設での受講者代表3名、公開講座の講師1名及び愛媛大学1名、合計9名で構成した。第1回実施委員会では、事業の内容や実施方法、広報活動等について共通理解を図り、第2回実施委員会では、受講施設の実施状況の報告の後、今後のエル・ネット「オープンカレッジ」の方向性等について検討した。
   
3.概 要
   愛媛大学では、公開講座「街がはぐくむ演劇、演劇がはぐくむ街」(全3回)を大学で独自収録し、愛媛県総合教育センターVSAT局から配信した。当事業においては、受講者を募り、県内3受講施設(新居浜市立別子銅山記念図書館、愛媛県立中央青年の家、内子町内子東自治センタ−)において、モデル的に講座を開催したものである。1回目・2回目は、講座の放送終了後、受講者に質問票を記入していただき、その内容を集計し、最終日までに、講師の方で予め回答を準備することができるようにした。3回目には、講座の録画放送中からFAX等で質問を受付け、講座終了後ライブ放送で、前回までの質疑内容と併せてリアルタイムに講師が回答した。なお、愛媛県立中央青年の家では、質疑の終了後、文部科学省の担当者とチューター及び受講者10名で意見交換を行った。
(1)受講講座と放送日時
  ☆ 第1回 平成14年12月6日(金)10:00〜11:50
 ○レビューが生まれた街     進化する演劇都市、宝塚    
 ○ブロードウェイ・ミュージカルの世界とニューヨーク
☆ 第2回 平成14年12月7日(土)15:00〜16:50
 ○町民劇場の保存と地域づくり
 ○フランス演劇の舞台をめぐって    パリの劇場とアヴィニョンの演劇祭
☆ 第3回 平成14年12月21日(土)15:00〜16:35
 ○内子座(愛媛県内子町)とグローブ座(ロンドン)
 ○オペラとオペレッタの街、ウィーン
   
(2)広報活動
   各受講施設及び公民館等社会教育関係施設、市町村等にポスター200枚、チラシ2,000枚を配布し、広く一般に参加者を募集するとともに、各受講施設においては、施設利用団体へ積極的に参加呼び掛けを行ったり、地元の敬老会や女性団体へも働きかけを行ったりした。さらに、愛媛県ホームページへの参加者募集の掲載、報道機関へのお知らせなどの広報活動を行った結果、地元新聞に受講者募集の記事やモデル事業の実施状況の紹介が掲載された。
   
(3)受講・通信体制
   原則として、3回とも受講されることを目標としたが、一人でも多くの住民にエル・ネット「オープンカレッジ」に触れる機会を提供するため、1回のみの受講も認めることにした。なお、3回の講座を全て受講した方には、皆勤者として、閉講式の際、愛媛大学から修了証書を授与した。また、当日どうしても受講できない方がいる場合は、当日以外の日に受信施設で受講できるようにした。
 最終日は、質疑応答がリアルタイムでの放送であったため、一本のファックスでは混雑し、モデル事業の進行に支障をきたすことが予想されたため、質疑受付は、講義終了後ではなく、講義中も随時受付けることとした。
   
(4)受講者数(延べ人数)と質問数
 
 
別子銅山記念図書館
中央青年の家
内子東自治センター
合 計
受講者数
46
68
48
162
質 問 数
14
17
37
皆勤者数
11
26
 
4.本事業を振り返っての成果と課題
(1)講座内容について
   
   
3.事業の成果と今後の課題
(1)モデル事業実施の成果
   今回、愛媛大学公開講座「街がはぐくむ演劇、演劇がはぐくむ街」のテーマで6名の講師が講座を担当したが、講座内容に変化があり、各講師が自分の経験、考えを力説したことが受講者にも伝わった。アンケート結果から見ても、「講座の進み方の速さは、適当だった」「放送で使われた演出も合っていた」「話し方についてもよく聞き取れた」「講座の内容も分かりやすかった」という回答が最も多く、充実したテキストがあったため、講師の話を聞きながら講座内容を確認できたことによって、一層理解が深まったものと考えられる。また、受講者にとっては、エル・ネットがどういうものであるのかを知るきっかけにもなったし、大学の講義の様子についても関心を持つことにもつながった。
 一方、「画面が単調だったと感じましたか」という問いに対して、「単調だった」と感じた割合が高かった。今回の講座で使われた映像や写真、地図等は、「画像がきれいで、分かりやすい」という回答もあったが、著作権の問題はあるものの、さらに補助資料として、動画や音楽、パネル等があれば、意欲的な姿勢で受講でき、講座内容の理解を助けることにつながったものと考えられる。
   
(2)広報のあり方について
   受講者の募集については、ポスター・チラシ等を受講施設や公民館、市町村等に配布したが、アンケートの結果を見ると、「公開講座を何によって知りましたか」という問いに対して、「知人」が多く、ポスター・チラシによる周知効果は十分とは言えないことが分かる。市町村の広報誌や公民館だよりへの掲載、さらには全戸配布のフリーペーパーを活用した情報提供なども実施していくことが必要と考えられる。また、「知人から」の情報が多いことから、エル・ネットの受信施設のよさを機会あるごとにPRをしていくことも大切である。
 
(3)受講体制について
   今回のモデル事業の受講者は、平均すると、各受講施設1日あたり15〜20数名であり、その構成は、20歳代から80歳代と年齢層も幅広く、性別にもあまり片寄りは見られない。受講者の受講の動機を見てみると、「一般教養を高めるため」「興味のあるテーマであるため」がほとんどとなっている。
 また、皆勤者数が26名というのは、講座実施の時間的な設定とも関連している。
 1回目の講座が平日の午前で、2回目・3回目の講座は土曜日の午後という時間設定であったため、参加が難しいとの声も寄せられた。アンケートの結果を見ても、講座の実施希望の時間帯は、土曜日、日曜日が最も多いという結果が出ていることから、今後、受講者が参加しやすい時間設定を考えていくことが大切である。
 
5.エル・ネット「オープンカレッジ」の今後について
 
 今回の受講者は、エル・ネット「オープンカレッジ」を活用した遠隔講座の重要性についての理解を持つきっかけとなったが、多くの人には、十分周知できていないのが現実である。そこで、まず、各受信施設において、地元の広報誌等を使って、広くエル・ネット「オープンカレッジ」の情報を提供し、視聴の機会を設け、このシステムの有効性を理解してもらうことが大切である。そのためには、今回の講座のビデオを地域での研修講座の一コマとして活用したり、個人への貸し出しを行ったりすることも必要である。
今後、住民がエル・ネット受信施設に足を運び、講座を視聴することを推進していくためには、一方通行の講義から、双方向システムにしていくことが重要である。
 今回は、ファックスや質問票による質疑にとどまったが、今後は、メールやチャットによるやり取りやテレビ会議システムなどの導入も考慮しながら、エル・ネットを活用した講義の普及に努めていくことが重要である。さらには、仕事や育児・介護等で時間的制約のある人、山間島しょ部で地理的要因で学習機会に恵まれていない人への対応を図るため、講義そのものをインターネットで受講希望者に配信していくことも必要と考えられる。
   
(資料)      <平成14年12月23日付 愛媛新聞>
 
   
 
<アンケート集計表>       総回答数(99)
  1 性 別   1 男 (45)   2 女(54)
   
  2 年 齢
20代(13)  30代(12)  40代(29)  50代(17)
60代(12)  70代(12)  80代(1)   無回答(3)
   
  3 職 業
農林漁業(5) 自営業(3) 勤め人(45) 主婦(16) その他(30)
   
  4 受講の動機について(1つだけ○)
1)一般教養を高めるため(46)   2)職業上の専門知識を得るため(1)
3)興味のあるテーマであるため(33)
4)その他【公民館の呼びかけ、内容の確かめ、友人の勧め等】
   
  5 今回の公開講座が開かれることを何によって知りましたか。(1つだけ○)
1)広報誌(3) 2)チラシ(14) 3)ポスター(1) 4)受信施設(7)
5)教育委員会(20)6)公民館(14) 7)知人(33)8)その他(7)【老人会等】
 
   
  6 放送された講座の進み方の速さはどうでしたか。
1)遅かった(2) 2)どちらかというと遅かった(3) 3)適当だった(83)
4)どちらかというと速かった(8) 5)速かった(3)
   
  7 放送された講座内容で聞き逃したと思う箇所はありますか。
1)まったくない(37) 2)少しある(545) 3)かなりある(5) 無回答(3)
   
  8 放送された講座内容で再視聴したい箇所はありますか。
1)まったくない(58) 2)少しある(35) 3)かなりある(1) 無回答(5)
   
  9 放送で使われた演出(字幕やパネル、取材映像等)は、講義内容に合っていましたか。
1)まったく合っていない(2) 2)どちらかというと合っていない(3)
3)どちらでもない(17)4)どちらかというと合っている(39)
5)よく合っていた(37) 無回答(1)
   
  10 講師の話し方について、どのように感じましたか。
1)聞き取りにくい(2) 2)どちらかというと聞き取りにくい(4)
3)聞き取れた(58)  4)よく聞き取れた(35)
   
  11 講座の内容について、どのように感じましたか。
1)分かりにくい(7)   2)どちらかというと分かりにくい(13)
3)分かりやすい(72) 無回答(7)
   
  12 画面が単調だと感じましたか。
1)まったく感じなかった(13) 2)少し感じた(61)
3)単調だった(22) 無回答(3)
 
   
  13 日頃、教養・教育番組(テレビ)をどれくらい見ていますか。印象でお答えください。
1)全く見ない(3)    2)時々見る(74)    3)よく見る(16)
4)連続してみる番組がある(4)  無回答(2)
   
  14 視聴された番組について、良かった点や改善点など、お気づきの点をお書きください。
○ 良かった点
内容
時間配分やテーマ構成が適当で飽きなかった。
映像
自分の経験
資料に関して大変おもしろかった。
考え
話し方が丁寧で見やすく、分かりやすかった。
自信が力説されていた。
録画なので、映像
講師の話し方は、明瞭で、はぎれもよかった。
音楽が編集されていて、生の講座とは違ったよさがあった。
テキストが丁寧に作成されていて、ためになった。
宝塚では、歴史上のことが分かった。
大学の講義の様子がわかった。
質問に対し、講師からの話が聞け、双方向性の内容が盛り込まれている。
かなり凝縮した内容にされているのが分かった。
2つの内容が2名の方により講義が行われ、変化があり、休憩をとりながらの進行でよかった。
資料に基づいていたので、メモをとりやすかった。
臨場感があってよかった。
内子座について、身近で分かりやすかった。
専門的なテーマについて、より高度な知識を得ることができる方法があることを知った。
映像等が多く、画像がきれいだった。
専門的内容を短時間で要点をおさえた学習ができる。
写真や地図が多く分かりやすかった。
劇場に足を運ぶことは、ほとんどないので、講座を通してこういう世界に触れることができてよかった。
フランス観劇が少し分かった。
舞台のつくり、裏側のしくみなど説明がよくされていた。
歴史
   
  ○ 改善点
内容に応じた紹介画像を多く取り込むなど、編集に工夫がほしい。
文字資料映像の字が小さすぎる。
動画による資料映像があれば、より理解が深まった。
画面が単調だった。
ミュージカルの話に、映像も音楽もなかった。
音声に少しノイズが入る。
聞き手の雰囲気が講師に伝わらないのか単調になりやすい。
講師の話のテンポが速い。
資料に建物
ボードや資料による変化があれば見やすい。
地図などたくさん載せて欲しい。
休憩時間を10分は欲しい。
プロジェクターが暗く、画面が見えにくかった。
ビデオのつなぎ目で録音のレベルが異なっていた。
もう少し動きがあればよい。
写真
パネルをもっと使った方が聞きやすい。
VTR等を活用して、目に訴えた方がよい。
放送大学のようにスカイパーフェクトTVとかでの提供を検討してほしい。
地図を使った説明の時に、説明されている箇所とカメラワークが部分的にずれていた。
受講する者が講義内容を選択できたらもっと興味をもって受講できた。
講師は座って講義して欲しい。
学生を前にした講義そのものの講座になれば、よりリアルな感じで受講できる。
別表がテキストにも印刷されていると、帰宅後も味わえる。
録画の完璧さよりは、生出演の方が楽しめる。
事前にテキストを読んでおけば、より理解できる。
講師の一方通行だけに、もっと写真がほしい。
テーマに合った関係者との対話場面を流すとよい。
マイクが近く、講師の息つぎの音が気になった。
インタビューの一部を本人の声と表情で伝える。
テキストを読むだけであった。
オペラのあらすじについての説明が少し長すぎた。
テキストは、ポイントを絞ってほしい。
関連映像が見たかった。その方が理解を助ける。
ミュージカルなので、少し音楽を入れてもよかった。
テキストに書き込めるよう余白がもう少しほしい。
映像が手持ちビデオの撮影のため、揺れて見づらい。
画面は大きい方がよい。
   
  ○ その他
ヘッドホンでの受講を希望する。
予想していたより興味のある話だった。
今の時代決められた時間に放映するのではなく、インターネット等で受講希望者が希望する講義を希望する時間に受講できるようにすべき。
テロップや文字を下側に出すと理解しやすい。
   
  15 本日の講座のような、衛星通信を利用した遠隔講座について、受講に際して受講料が必要だとしたら、受講したいと思いますか。
1 受講したいと思う。(30) 2 受講したいと思わない。(62) 無回答(7)
   
  (1と回答した場合)
1−1 受講料は1回(100分程度の講義)あたり、いくらぐらいが妥当と思われますか。
a.500円以下(16)b.1,000円(10)c.1,500円(0)d.2,000円(4)
e.2,500円(0)f.3,000円以上(0)
   
  1−2 どのようなサービスを希望しますか。
a.著名人の講師による講義が提供される。(23)
b.講師との質疑応答の機会が確保される。(8)
c.より充実したテキストが提供される。(11)
d.修了証の発行や生涯学習単位の認定が行われる。(2)
e.資格を取得する際に利用できる。(10)
f.大学の正規の単位が取得できる。(8)
g.その他(0)
   
  (2と回答した場合)
2−1 どのようなサービスが付加されれば、受講料を支払っても良いと思いますか。
a.著名人の講師による講義が提供される。(23)
b.講師との質疑応答の機会が確保される。(8)
c.より充実したテキストが提供される。(11)
d.修了証の発行や生涯学習単位の認定が行われる。(2)
e.資格を取得する際に利用できる。(10)
f.大学の正規の単位が取得できる。(8)
g.その他(0)
   
  2−2 上記のようなサービスが付加された場合、受講料は1回(100分程度の講義)あたり、いくらぐらいが妥当と思われますか。
a.500円以下(22) b.1,000円(27) c.1,500円(3) d.2,000円(5)
e.2,500円(0)   f.3,000円以上(0) 無回答(5)
   
  《今後の公開講座について》
16 実施希望の時間帯について
1)月〜金曜日の午前(15)  2)月〜金曜日の午後(16)
3)月〜金曜日の夜間(19)  4)土・日曜日(34)
  17 エル・ネットで学びたい分野について(興味のある分野に○を記入してください。 (複数可)
分  野 内     容     例 回答数
スポーツ 実技の指導を中心としたもの 18
趣  味 美術・工芸・園芸・書道・音楽等 54
語  学 外国語講座等 27
郷  土 地域をテーマに選んだもの 18
家庭生活 家庭生活に関するもの
健康保健 「心の健康」「家庭看護」等、健康・保健に関するもの 25
一般教養 上記以外の文学、教育、経済、科学等に関するもの 39
専門知識 コンピュータプログラミング等の専門的技術、職業上役立つ専門的知識 16
その他 その他興味のあるもの(自然環境 野外活動)