第3章 モデル事業 3.事例


(3)「にいがた連携公開講座」とエル・ネット「オープンカレッジ」との連携をさぐる
「にいがた連携公開講座」実行委員会
(新潟県立生涯学習推進センター)

1.趣 旨
   県民の学習ニーズが多様化・高度化するとともに、地域においての学習要求が高くなってきている。これを踏まえ、県と市町村、大学等高等教育機関が連携する中で、多様で高度な学習機会を県内各地域住民に提供することを目的として、平成13年度から広域遠隔学習推進事業を実施している。これは、県が講座を主催し、講座の主会場を各地域巡回で実施するとともに、多地点接続のテレビ会議システムの双方向性を利用して、受信を希望する市町村等に講座を配信するものである。
 今回のモデル事業では、講座をエル・ネットでも発信することにより、県内各地にある受信局を通してより多くの県民の受講を可能にするとともに、当県で取り組んでいるこの事業を全国に紹介することを目的とした。また、当県はエル・ネットVSAT局を設置していないので、大学間衛星通信ネットワーク(SCS)経由で他県のVSAT局からの発信を試みた。
 
2.概 要
(1)にいがた連携公開講座について
   今年度の「にいがた連携公開講座」は、14の大学等、8市町村、それに2つの県の施設が参加し、市町村が希望するテーマにより、大学等から講師を選定して派遣する。その講座は、テレビ会議システムを利用して市町村へライブで配信する。今年度は下表の19講座を実施し、その中の1つをモデル事業としてエル・ネット「オープンカレッジ」の1講座に登録し、10月26日に全国に配信した。
No
日時
主会場 テーマ・講師 受信会場
7/14
(日)
羽茂町公民館 「異文化とコミュニケーション」
県立新潟女子短期大学
十日町情報館
県立生涯学習推進センター
7/14
(日)
羽茂町公民館 「安全で持続可能な農業の姿とは?」
新潟大学
十日町情報館
県立生涯学習推進センター
7/27
(土)
三条市中央公民館 「新しい仕事おこし」
長岡大学
青海町「きらら青海」
十日町情報館
県立生涯学習推進センター
8/4
(日)
小国町就業改善センター 「完全学校週5日制時代の家庭と地域」
新潟大学
三条市中央公民館
岩船広域教育情報センター
刈羽村「ラピカ」
十日町情報館
県立生涯学習推進センター
8/11
(日)
三条市中央公民館 「がん克服への道」
日本歯科大学新潟歯学部
岩船広域教育情報センター
十 日町情報館
県立生涯学習推進センター
8/18
(日)
十日町情報館 「国際化の中の人間理解〜日本と韓国〜」
新潟国際情報大学
三条市中央公民館
岩船広域教育情報センター
県立生涯学習推進センター
9/7
(土)
青海町総合文化会館「きらら青海」 「自然環境と人々の暮らし」
上越教育大学
岩船広域教育情報センター
十日町情報館
県立生涯学習推進センター
9/20
(金)
岩船広域教育情報センター 「坂口安吾の書簡と生原稿の語るもの」
敬和学園大学
青海町「きらら青海」
十日町情報館
県立生涯学習推進センター
9/28
(土)
県立生涯学習推進センター 「理科教育と技術社会」
新潟工科大学
岩船広域教育情報センター
十日町情報館
羽茂町公民館
10
「発明・アイデアのコツ」
長岡工業高等専門学校
11
10/4
(金)
岩船広域教育情報センター 「会津八一の書簡に読む、その素顔と魅力」
敬和学園大学
青海町「きらら青海」
十日町情報館
県立生涯学習推進センター
12
10/13
(日)
十日町情報館 「まちづくり・市民参加・新技術」
長岡造形大学
青海町「きらら青海」
岩船広域教育情報センター
県立生涯学習推進センター
13
10/26(土)
13:00〜14:50
主会場:新潟大学
<エル・ネット特別講座>
「日本海がはぐくんだ地域と文化」
新潟大学
岩船広域教育情報センター
十日町情報館
県立生涯学習推進センター
新潟大学を主会場としてエル・ネットでライブで放映。「にいがた連携講座」参加の岩船広域教育情報センター、県立生涯学習推進センターからテレビ会議システムを通して、意見発表をしていただいた。
14
11/10
(日)
十日町情報館 「市町村合併の課題と展望」新潟産業大学 岩船広域教育情報センター
県立生涯学習推進センター
15
11/16
(土)
十日町情報館
岩船広域教育情報センター
県立生涯学習推進センター
<企画講座>
「身近な環境問題を考える〜大気汚染編〜」
新潟工業短期大学・新潟県森林研究所・新潟市環境対策課
羽茂町公民館
岩船広域教育情報センター
県立生涯学習推進センター
16
11/30
(土)
青海町総合文化会館 「きらら青海」 自然環境と人々の暮らし「新潟県の天気とくらし」
上越教育大学
岩船広域教育情報センター
十日町情報館
県立生涯学習推進センター
17
12/8
(日)
県立歴史博物館 「中国の旧正月〜日中の民俗文化の比較〜」
県立歴史博物館
三条市中央公民館
青海町「きらら青海」
羽茂町公民館・十日町情報館
県立生涯学習推進センター
18
12/14
(土)
県立生涯学習推進センター 「いま求められている子育てと子育て支援」
長岡大学
岩船広域教育情報センター
三条市中央公民館
青海町「きらら青海」
羽茂町公民館十日町情報館
19
「子育てを支援する歯の知識」明倫短期大学
 
(2)当日のシステムについて
   新潟県内にはエル・ネットVSAT局がないので、大学間衛星通信ネットワーク(SCS)を活用し、新潟大学VSAT局から岐阜大学へ送信した。岐阜大学の村瀬先生、岐阜県総合教育センターの久世先生からご協力いただき、岐阜県内の情報ネットワークを通してエル・ネットVSAT局の岐阜県総合教育センターに転送し全国に発信した。

図1 モデル事業イメージ図
3.事業の成果と課題
 
(1)講座内容について
   成 果
 県立生涯学習推進センターでは、平成13年度まで「新潟ふるさと学」というテーマで地域の自然、歴史、文化等に関わる講座を実施していた。これら地域に関わる講座は関心が高く、比較的参加者も多かった。このような講座をエル・ネット等を通して県内各地に配信することは、都市部に比べて受講機会の少ない中山間地の県民も、より手軽に講座に参加できるなど、受講者のニーズに合ったものと考える。今回の受講者の次ページのアンケートにも見られるよう「よかった」という意見が多い。
 
【受講者の意見】
エル・ネットで視聴して
日本海の恵について知ることができた。また、日本海の活用方法についても知ることができた。塩の道、魚類の流れがよくわかった。
テレビ会議システムで視聴して
今日は大変丁寧な資料で説明、講義の内容で分かりやすくよかったと思います。
県内でも、県外でも各産業別(農業、漁業、建築、商業等々)起源からの歴史等を少し掘り下げてみたらどうでしょうか。
大変良い勉強になりました。新潟の加藤さんのお話は参考になりました。郷土史関係の講座を希望します。
このような講座を受講して勉強になりました。ありがとうございました。
私は直江津生まれ、昭和20年頃までの町の商業など、私の家とのつき合いがあり、改めて想い出します。魚、乾燥海産物の問屋がいくつもありました。〆上げ、高助、長戸や等々、今は皆無のごとく、商売のつき合いが子供ながら色々想い出しました。新潟の港の交流も商業だけでなく、時代の流れに大きな歴史がつくられてますね
 

写真1 新潟大学から講義する原先生

写真2 生涯学習推進センターでの受講風景
   
   課 題
 受講者のニーズに対応するとともに、いかにして質の高い講座を作るのかが最大のポイントである。テーマの選定、講義技術の向上、映像をうまく使った講座、わかりやすい映像を送信するためのカメラワークの検討など、講座を主催する側は十分に考慮していかなければならない。特に、まだ十分に普及していないエル・ネットオープンカレッジを県民に周知させるためにも、テキストの入手方法を知らせたり、場合によっては準備しておく必要がある。
 また、新しい受講者層の発掘のためにも確実に人数が確保できる内容だけでなく、話題性のある内容も取り上げていく必要がある。
 
【受講者の意見】
エル・ネットで視聴して
各種の話の中で地名が出てきたが、もっと地図を利用して説明がほしかった。
バックの色が白で顔が写るだけでは見にくい。カメラを引いて演台など会場全体が見られたり、途中から見た人もわかるように放送内容の横断幕などがあるとよかった。
有意義なお話、生放送ではなく録画編集してもっとわかりやすくしてほしかった。
レジメやテキストが事前にほしかった。
プレゼンテーションの工夫やビデオなどの動画も活用してほしい。
受講者の底辺を広げるためにもっと話題性のある講座も必要。
テレビ会議システムで視聴して
受講者が少ないのが、いささかさびしい感があった。もっと大勢の人たちから受講して欲しいと思った。
   
(2)双方向性について
  @ 成 果
 「にいがた連携公開講座」では、テレビ会議システムの双方向性を生かして、受信会場の参加者からも、リアルタイムで質問を受け付けている。今回は意見発表という形ではあるが複数の会場からお話しいただいた。メインの講師以外に関連のある話が聞け、講義の質に深まりが見られた。質問できなかったエル・ネット受信会場の参加者も、主会場からの一方的な話よりよかったという意見が多い。また、同様の形式で行った「にいがた連携公開講座15回目 企画講座」(表1参照)では、メイン講師で答えられない内容については、他の会場の講師から答えていただくこともあった。
 
【受講者の意見】
エル・ネットで視聴して
講師の話よりメイン会場の話の方がよかった。(言葉がはっきりとわかった)
講師1人が淡々と話すのではなく、各会場から報告放送があり単調さを緩和していた。
地方(新潟、村上など)の会場を結び、その地との日本海とのつながりについてのお話は参考になった。
各地区の代表のお話が大変よかった。図、写真なども多くわかりやすかった。
テレビ会議システムで視聴して
意見発表も大変良かった。
原先生もまとまりがありました。加藤さん、岡村さんとも違った角度からの意見(研究)でよかった。
 

写真3 生涯学習推進センター会場から
意見発表する受講者

写真4 岩船広域教育情報センター会場から
意見発表する受講者
   
   課 題
 双方向性を求めるためには、システムの構築が不可欠である。特に質問の回答をすぐにもらったり、意見交換をするためには、ライブ放送が不可欠となる。しかし、現在の一方的なエル・ネット放送の現状を考えると、画質を問わないのであればテレビ会議システムの回線を別個に引くなどの方策も考えられるが、なかなか難しい。
 また、双方向で意見交換を行う場合も発表者全員の資料を準備したり、講座全体の綿密なタイムスケジュールを決めておく等、放送時間内に講座を収めるような綿密な計画、準備が必要となる。
 
【受講者の意見】
エル・ネットで視聴して
新潟会場からの発表は速すぎて多くを聞き逃した。村上会場からの発表は、パネルや手法を使っていただければ理解がしやすかった。
テレビ会議システムで視聴して
新潟会場報告も興味ある内容でしたが、レジメが配布されたらよかったと思う。
新潟からの発表はレジメがなかったのでよく分からなかった。
   
(3)システムについて
   成 果
 ライブで放送を行う場合、エル・ネットVSAT局がなくても今回のような形態で発信できる方策があるということが実証できた。しかし、そのためには他県のVSAT局や、そこに中継するための施設に負担がかかることも承知しておかなければならない。
   
   課 題
 エル・ネットで直接放送しなければ本来の画質の良さを生かし切れない。動きはエル・ネットの方がテレビ会議システムよりスムースであったが、画質についてはほとんど変わらないように思えた。また、アンケートにもあるように画面の劣化があり、特に数字などは見えにくい状況であった。テレビ会議システムで実施している「にいがた連携公開講座」ではこの点が課題で、拡大して写さないと資料の数字や文字はほとんど見えない状態であり、どうしても資料を放映しなければならないときは、同様の印刷した資料を視聴者が持つようにしている。また、意見発表会場からの音声中継に関しても、テレビ会議システムからSCSへの引継がなかなか難しかった。やはり、エル・ネットを利用しライブでクリアな映像や音声を送るためには自前のVSAT局が不可欠である。
 
【受講者の意見】
エル・ネットで視聴して
画面がもう少し鮮明になるような工夫はできないものか、字や図が見えにくかった。
話し方はいいのですが、マイクが悪いのか音声がこもってとても聞き難かったです。(講師のみ、他の会場はよかった)
画面が白黒かカラーかわからないくらいはっきりしなかった
テレビ会議システムで視聴して
スクリーンの映像も今日は特に良好でした。
資料の映像がはっきり映らない。(特に数字等)