第3章 モデル事業 3.事例


(2)常磐大学エル・ネット「オープンカレッジ」モデル事業報告
常磐大学エル・ネット「オープンカレッジ」モデル事業実施委員会
(常磐大学生涯学習センター)

1.趣 旨
   高等教育情報化推進協議会が文部科学省から委託を受けた「エル・ネット高度化推進事業」のうち、教育方法に関する調査研究ならびに通信システムに関する調査研究を行うため、大学の正規の授業の提供方法および衛星通信と地上のインターネットの融合方法の開発に関するモデル事業を実施する。
 
2.委嘱期間
   平成14年8月5日から平成15年3月1日まで
 
3.内容等
 
(1)高大連携と生涯学習
  常磐大学の正規の授業を高校生にも、そして公民館などの生涯学習講座として活用してもらうための実験授業を行う。
今後、出張講義としての方法でなく、メディアを活用した単位取得方法の開発も行う。
(2)移動式受信装置の導入
  今年度開発された移動式のエル・ネット受信装置の活用方法についても検証する。
(3)著作権処理の簡便化
  アクアワールド大洗水族館の事業に参加する子どもたちの承諾書を文書で保護者の了解を得る方法について検証する。
(4)エル・ネットとインターネットとの比較
  インターネット系のeラーニングと衛星通信の比較を行う。
(5)独自収録
  常磐大学職員(AVエンジニア)による映像の収録および編集を行う。
 
4.実施経過
 
平成14年4月〜9月
制作および収録の打合せ/モデル事業実施委員会開催
8月〜9月
講座で使用する教材の制作・取材等
10月
大学独自の収録

『ボランティアとミュージアム』第3回「ボランティアの理念と実際−災害救援活動を例として−」の収録
〔収録の概要〕
   常磐大学コミュニティ振興学部が開講している「災害救援ボランティア論」をエル・ネット「オープンカレッジ」公開講座とした。本学の履修学生以外の受講者も意識し、それらの受講生ができるだけ臨場感を感じ、講座の内容を理解し易いような収録を目指した。
〔収録日程〕
   平成14年10月8日(火)8時30分から11時00分まで
〔収録スタッフ〕
   担当講師 吉永 宏 コミュニティ振興学部教授
〔講座の収録および編集者〕
   本学職員(AVエンジニア) 1名
〔講座進行および収録補助〕
   本学職員(生涯学習センター職員) 1名
   
『ボランティアとミュージアム』 第1回「水族館のヒミツT」および第2回「水族館のヒミツU」の収録
〔収録の概要〕
   常磐大学コミュニティ振興学部が開講している「ミュージアム教育普及活動」をエル・ネット「オープンカレッジ」の公開講座とした。収録は、本学の視聴覚教室内で行われ、後日、同収録内容と取材映像を編集し、「オープンカレッジ」講座として制作した。
〔収録スタッフ〕
   担当講師 坂井知志 コミュニティ振興学部助教授
〔講座の収録および編集者〕
   本学職員(AVエンジニア) 1名
〔収録日程〕
   平成14年10月23日(水)13時00分から17時00分まで
 
番組の編集
   平成14年10月10日(土)〜10月29日(土)
〔編集スタッフ〕
   本学職員(AVエンジニア) 1名
   
大学独自収録の学内での評価
   大学独自の収録は、「東京収録・スタッフ派遣」と比較し、コスト面でかなり低コストでの収録が可能である。また、映像技術面でも本学に整備されているパソコンソフトやAV機器を効果的に使用することができるため、特別な準備をする必要がなく、また人的にも専門技術スタッフが配置されており、収録や編集の両面にわたり、極めて簡便に番組制作ができることから高い評価を得ている。

平成14年11月  収録ビデオの提出
平成14年12月  放送
  『ボランティアとミュージアム』 全3回
    第1回「水族館のヒミツT」
      12月3日(火) 10時00分から11時20分まで
    第2回「水族館のヒミツU」
      12月10日(火) 10時00分から11時20分まで
    第3回「ボランティアの理念と実際 −災害救援活動を例として−」
      12月17日(火) 10時00分から11時20分まで
平成14年12月
事後処理・事業評価/モデル事業実施委員会開催
平成15年2月
 
5.成果と今後の課題
(1)事業の成果
 
「水族館のヒミツT」、「水族館のヒミツU」について
 この講座は、常磐大学コミュニティ振興学部の開講科目「ミュージアム教育普及活動」をエル・ネット「オープンカレッジ」講座として受講生に公開するとともに、本学学生に対しては、収録ビデオを同科目の授業の際に放映し、遠隔授業を再現した形態で受講してもらった。教材として取材映像の放映、テキストの構成においても視聴覚資料を多用し、より講座の内容をわかり易いものとした。また、講座中、課題を複数回出すことにより、一方通行になりがちな受講形態を参加型にするなど工夫を凝らした。特に本学学生においては、同形態の遠隔授業(学習)をはじめて体験する者が殆んどであったが、講座終了後の反応は大変良く、リアルタイムに講師に質問したり、講師や他会場の受講生も含め多元的な意見交換や討論などができるとよいとの意見があった。このことは、他大学の事例もあり技術的には可能であるので、本学における今後の検討課題としたい。
「ボランティアの理念と実際 −災害救援活動を例として−」について
 この講座は、常磐大学コミュニティ振興学部が開講している「災害救援ボランティア論」エル・ネット「オープンカレッジ」の受講生に公開したものである。エル・ネット「オープンカレッジ」の受講生を意識しながら、教材として取材映像の放映、OHCによる写真資料等の投影など、視聴覚資料を多用し、また、教室内の学生と同様に開講中に課題を出すことによって、一方通行になりがちな受講形態を参加型にするなど工夫を凝らした。
両講座を通じての成果
 大学の独自収録は、低コストで番組を制作できるとともに、大学の特色を生かした講座をつくり上げ、それをエル・ネット「オープンカレッジ」の受講生に提供できる点に特色があると思われる。その点、本学においては、人間科学部やコミュニティ振興学部の授業で使用している機器等が整備されている。それは、収録した映像を編集するパソコンソフトや画面の合成や変形などによって映像を効果的に作成したり、編集するための各種AV機器等である。また、これらの機器等を駆使できるAVエンジニアも在職している。従って、本学において、大学独自の収録を行うにあたっては、特別な準備をする必要もなく、収録・編集の両面で極めて簡便に成果を上げることができた。今回、新たな取り組みとして、エル・ネット「オープンカレッジ」の受信施設として、本学の講座を一般の方も受講できるよう放送時に受信装置設置の教室を開放し、一般の方20名に受講していただいた。エル・ネット「オープンカレッジ」は、全員がはじめての受講であった。この取り組みを実施するにあたり、県内の複数の各社会教育施設等への聞き取りを行った。本県において「オープンカレッジ」をプログラムとして企画しているところは殆んどなく、住民レベルにおいてもエル・ネットの存在そのものを理解しているケースは極めて少ないことがわかった。今回の受講者20名のエル・ネット「オープンカレッジ」への評価は非常に高く、この素晴らしいシステムを、一日も早く利用したい、近隣の公民館等で受講したいとの感想や、また、国や自治体のエル・ネットの推進政策はどうなっているのかなどの質問もあった。今回の取り組みで、エル・ネットを利用することによって、全国の大学のさまざまな講座を受講することができ、「オープンカレッジ」に対する需要が間違いなくあること、今までの限られた環境の中での学習機会が大きく広がり、多様な学習ニーズに応えるためにもエル・ネットのさらなる活用を検討していくことが必要であることを改めて確信した。
(2)今後の課題
 
過年度および本年度実施講座について、点検項目を設けて慎重に点検を行ったうえ、改善すべき点を見直して今後の講座開設にあたる。
今回の講座は、従来の受講生が受身の形である受講形態を改め、講座展開中に課題を出すなど参加型の内容とした。次年度以降、その発展型として担当講師と受講生の間で質疑応答や別会場の受講生との意見交換など双方向通信が可能となる講座を提供できるよう検討していきたい。
「オープンカレッジ」をはじめ、エル・ネットの活用が決して十分とはいえない本県において、この素晴らしいシステムをいかに一般の方々や公民館等の社会教育施設、高等学校等に周知していくか、また、既存の施設でのさらなる有効活用への助言、需要の喚起など、エル・ネット全体の推進政策を検討し、本学がそのリーダー的役割を果たしていきたいと考える。