第3章 モデル事業 3.事例


(10)沖縄県エル・ネット「オープンカレッジ」モデル事業報告
沖縄県エル・ネット「オープンカレッジ」モデル事業実施委員会
(琉球大学生涯学習教育研究センター)

1.趣 旨
   琉球大学は、高大連携事業として、高校生に大学における高度な教育・研究に触れる機会を提供するため、授業科目の一部を公開するとともに、高校生を対象とした公開講座を開設することを検討しており、平成15年度からの実施に向けて琉球大学と沖縄県教育委員会間で協議が進められている。
 そこで、平成14年度には、高大連携事業のプレ事業として、琉球大学と沖縄県教育委員会との連携により、エル・ネット「オープンカレッジ」を活用して、県内高校生に大学レベルの教育に触れる機会を提供し、電話による双方向の質疑応答を取り入れた講座を企画・実施した。
 
2.内容等
(1)実施機関
   本沖縄県エル・ネット「オープンカレッジ」モデル事業実施委員会を設置し、事務局を琉球大学生涯学習教育研究センターに置いた。実施委員会は、琉球大学側から講師2名、担当者3名、教育委員会側からエル・ネット及び高大連携関係者4名、収録会場の県立総合教育センター関係者2名の計11名で構成した。
   
(2)内 容
   沖縄県のエル・ネット機材を使用して、実際の講義を収録したビデオをVSAT局から放送し、ビデオ終了後にサテライト会場と電話を使ってライブで質疑応答を行うものとした。また、講義内容は、県内高校生に興味をもってもらうため、琉球の歴史関係とし、映像を多く取り入れ、難度も高校生向けに工夫した。
 
3.実施経過
 
平成14年 8月〜11月 制作及び収録の打合せ
    テキスト・教材の制作・取材等/実施委員会開催
  11月19・21日 大学独自収録
  12月 編集
平成15年 1月7・14日 放送(電話による質疑応答)
  2月〜3月 事後処理・事業評価/実施委員会開催
 
(1)大学独自収録
 
 平成14年11月19日(火)13時50分〜15時40分
「琉球と中国・アジアとの交流史(琉球王国と首里城/琉球とアジアの交流)」(講師:高良倉吉琉球大学教授)の収録
 平成14年11月21日(木)13時50分〜15時40分
「琉球・中国の文化交流史とその遺産(琉球の詩人と中国/漢詩に詠まれた琉球)」(講師:上里賢一琉球大学教授)の収録
   〔収録の概要〕
 エル・ネットの機材設備のある県立総合教育センターの研修室に県立北中城高等学校の生徒を集めて教室形式で講義を進め、その模様を録画した。講義はテレビモニターを使用して、事前に撮影した風景や編集した資料を示しながら進めた。
収録時は、外の騒音を拾わないように窓を閉め切ったうえ、冷房を作動させることができなかったこと、更に講師には背広を着用してもらったため、収録環境が劣悪となってしまった。
 収録作業は、琉球大学及び県の職員とも、エル・ネットの機材操作に慣れていないため、(株)沖縄映像センターのスタッフに応援をお願いした。
 放送用ビデオへの編集は、パソコン処理によって、講義の模様にテレビモニターで使用した映像を取り込む編集を行った。この作業は、パソコン処理に詳しい琉球大学の教官が大学院生の協力を得て行ったが、初めてのこともあり、かなりの労力と時間を費やすことになった。
 
 
 (2)放送
 
 平成15年1月7日(火)10時00分〜11時50分
「琉球と中国・アジアとの交流史(琉球王国と首里城/琉球とアジアの交流)」(講師:高良倉吉琉球大学教授)の放送及び電話による質疑応答
 平成15年1月14日(火)10時00分〜11時50分
「琉球・中国の文化交流史とその遺産(琉球の詩人と中国/漢詩に詠まれた琉球)」(講師:上里賢一琉球大学教授)の放送及び電話による質疑応答
   〔放送の概要〕
 VSAT局(沖縄県教育委員会会議室(沖縄県庁庁舎内))をメイン会場としてスタジオをセットし、サテライトの5会場と電話回線を接続した。スタジオには講師に待機してもらい、サテライト会場で高校生に視聴してもらった。まず収録したビデオをVSAT局から放送し、ビデオ終了後、講師の映像をライブで送り、電話による質疑応答を実施した。サテライト会場では、講師の生の姿を見ながら質問をし、講師は、電話での質問に応えるという方式である。
 
4.成果と今後の課題
 
(1)
 沖縄県は島嶼県であり、衛星通信システムを利用した遠隔教育の需要が他県と比較してより多いと思われるが、琉球大学には、県内全域に発信する有効な媒体がなく、また、県はエル・ネットを有しているにもかかわらず、その活用が十分ではないという状況にある。今回のモデル事業では、高大連携事業に特化したものではあるが、大学の公開講座を遠隔地の受講者に提供するのには有効な媒体であることが改めて認識され、県にとっても、エル・ネット利用のきっかけができたものであった。
公開講座の独自収録や特にライブでの電話による質疑応答など、機器操作に専門性が要求されるものであり、琉球大学及び沖縄県とも初めての試みであった上に、職員が機器操作をする頻度が少ないため、民間事業者の協力がなければ実現が難しかった。また、編集作業も専門スタッフではない教官等の個人の力量に依存した形で進めたものであり、今後、収録、編集、放送にかかわる専門スタッフの養成が必要である。
(2)
 受信局を持つ高校を中心にサテライト会場として5会場を選定し、結果として7高校の生徒が延べ409人受講した。
高校生へのアンケート結果をみると、番組としての技術的な面での指摘(講師の音声の明瞭度、電話での質疑応答時の音声がループしたこと等)を除けば、概ね評価は良かった。
 質疑応答に関しては、生放送ということもあって、実際に質問が出るかどうか心配な面もあったので、テキストを事前に配布し、予習を心がけてもらった。この点に関しては、講義内容が沖縄の歴史という高校生にも身近な題材であったこともあり、終了時間が気になるくらい質問が出され、心配が危惧に終わった。
 講義に引き続いた質疑応答の部分を生放送したのであるが、講義が高校生を前にしたものであり、講師も通常の講義のように話しかけながら行っていたので、放送全体をあたかも生で進めているように感じた高校生がいた。
(3)
 今回のモデル事業は、高大連携事業として、事情の許す限り、県内の高校には授業の一環として一斉に視聴してもらうことを期待し、教育委員会が各高校に対して積極的に広報し、より多くの高校生が視聴できるように働きかけたが、放送時間が固定されていること、また、途中10分間の休憩を入れたものの正味100分の講義であったことなど、高校の授業時間とオープンカレッジの放送時間との調整が難しく、高校側の協力が十分とはいえない面があり、この点について課題が残った。
(4)
 沖縄県内でいわば初の公式的な高大連携事業ということで、一部地元紙が取り上げ、エル・ネット「オープンカレッジ」の存在が県内に広く知れわたったこと、また、大学独自収録、VSAT局からの発信、電話での双方向の質疑応答と初めて取り組んだ事業としては、一応の成果をあげることができたと思われる。この経験を今後に生かしていきたい。
   
5.受講者講者へのアンケート−集計結果−(回答数409名)〔( )内の数値は%〕
 

 

  1 「放送番組」の進み方はあなたにとって速かったと思いますか、遅かったと思いますか。
1 遅かった ( 4.8 )
2 どちらかというと遅かった ( 14.8 )
3 適当だった ( 60.0 )
4 どちからというと速かった ( 17.8 )
5 速かった ( 2.6 )
   
  2 放送された内容で聞き逃したと思う箇所はありましたか。
1 まったくなかった ( 9.5 )
2 少しあった ( 66.4 )
3 かなりあった ( 24.1 )
   
  3 放送された内容で再視聴したい箇所はありますか。
1 まったくなかった ( 9.5 )
2 少しあった ( 66.4 )
3 かなりあった ( 24.1 )
   
  4 放送で使われた各種演出(字幕やパネル、取材映像)は、講義内容に合っていましたか。
1 よく合っていた ( 11.3 )
2 どちらかというと合っている ( 42.3 )
3 どちらでもない ( 40.5 )
4 どちらかというと合っていない ( 4.6 )
5 まったく合っていない ( 1.3 )
   
  5 放送中に登場した講師や出演者の話し方について、どのように感じましたか。
(話し方)
1 よく聞き取れた ( 10.0 )
2 聞き取れた ( 42.7 )
3 どちらかというと聞き取り難かった ( 35.2 )
4 聞き取り難かった ( 12.1 )
   
  (内容)
1 わかり易かった ( 21.2 )
2 どちらかというとわかり難かった ( 59.6 )
3 わかり難かった ( 27.2 )
   
  6 画面が単調だと感じましたか。
1 まったく感じなかった ( 13.2 )
2 少し感じた ( 59.6 )
3 単調だった ( 27.2 )
   
  7 日ごろ、教養・教育番組(テレビ)をどれくらいみていますか。印象でお答えください。
1 連続してみている番組がある ( 3.3 )
2 よく見る ( 9.2 )
3 時々見る ( 49.6 )
4 まったく見ない ( 37.9 )
   
8 「視聴された放送番組」について、良かった点や改善点など気づいたことがありましたら、以下の欄にお書きください。
  8−1 良かった点
ふだん学ぶ歴史を細かく聞けたこと
歴史が深いところまで分かった
いろいろ勉強になった
高校生の私たちにとっても内容がわかりやすかった
大学の授業の内容が分かってよかった
生で大学の授業を聞けたところ
説明の仕方がとても分かりやすかった
番組の進め方がよかった
聞き取りやすいテンポであった
絵や図が分かりやすかった
図などが大きく出ていたところがよかった
相手の顔を見て話が聞けたのでよかった
語りかけるように話してくれるのでおもしろく感じた
電話で質問ができたのでよいと思う
電話の質疑応答がよかった
質問がよかったと思う
テレビ電話がすごい
興味がわいた
おもしろかった
今までこういう経験がなかったのでよかった
大学進学への気持ちが強くなった
   
  8−2 改善点
時間が長かったので短くしてほしい
進み方が単調だった
分かりやすい言葉で教えてほしい
もうちょっと画面を動かしてほしい
画面が単調で飽きて眠りやすい
みんなが眠くなってしまうので、もう少し楽しくやってほしい
もっと興味深い画面にしたら学生も集中しやすいと思う
板書してある字が見えにくかった
話が聞き取りやすいようにしてほしい
聞こえにくい。もう少し声に張りをつけてほしい
質問の時の音がエコーになってて聞き取りにくかった
画面と音声がかなりずれていて分かりにくい
画面が見にくかったこと。声の遅れがあった
画面が見えにくい時が少々あった
   
  8−3 その他
内容が難しい