第2章 平成14年度エル・ネット「オープンカレッジ」実施状況

3.双方向質疑等の事例
 遠隔講義におけるライブ放送や双方向質疑は、学習者の学習意欲向上や、学習内容の理解を促進するために、重要なものとして位置付けられている。双方向質疑等を実施するためには、エル・ネットの衛星通信に加えて、他のシステムを組み合わせることも必要となる。そのシステムには、以下のように多様な手段があり、それぞれ特色のある講座番組が実施されてきた。
通信経路 使用システム・機器 使用目的



地上系 テレビ電話テレビ会議システム
(フェニックス・ISDN)
双方向質疑
電話 双方向質疑
質問送信
ファックス 質問送信(主に受信施設からの送信手段)
地上系・無線系 通信機能付き電子情報ボード 双方向通信
無線系 携帯電話(通話) 質問送信
インターネット テレビ会議システム 双方向質疑
メール機能付き携帯電話(メール) 双方向質疑
質問送信
デジタルカメラ付き携帯電話(画像送信) 画像送信
講座独自のホームページ構築してのチャット・掲示板 双方向質疑
衛 星 VSAT局 双方向質疑
  さらに、放送は、以下のように「ライブ放送」、「録画放送」「録画放送+ライブ放送」の形態が考えられる。
・「ライブ放送」:上記システムを使用して各会場を結び、リアルタイムの双方向質疑を取り入れた講座を実施する。
・「録画放送」:上記システムを使用して各会場を結び、双方向質疑を取り入れた講座を実施し、その講座番組を収録して放送する。
・「録画放送+ライブ放送」:収録しておいた講座番組を放送し、その後ライブ放送に切り替えて、上記システムを使って双方向質疑を実施する。または、収録しておいた講座番組の放送中に、上記システムを使って双方向質疑を実施する。 今年度も、エル・ネット「オープンカレッジ」では、衛星通信に加え、他のシステムを組み合わせることによって、ライブ放送や双方向質疑を実施した講義が行われた。以下で、それらの事例を紹介する。

  (1)衛星(ライブ放送)
 
秋田県教育庁生涯学習課/
千葉大学『トライアングル「家庭・学校・地域」子どもを育てよう』
   



【概要】
 12月13日(金)、千葉大学講座『トライアングル「家庭・学校・地域」子どもを育てよう』(明石要一/千葉大学教授)が、ライブ放送で実施された。秋田県総合教育センター(秋田VSAT局)をメイン会場とし、国立科学博物館との間で、エル・ネットによる双方向質疑が行われた。

【方法】
・会場
 ・東京(国立科学博物館):講師が講義を行う。
 ・メイン会場(秋田県総合教育センター):コーディネーターが司会を行う。
 ・サブ会場(秋田県鷹巣町中央公民館)
 ・サブ会場(秋田県増田町ふれあいプラザ)
 ・送受信の方法
  講師が講義を行っている東京(国立科学博物館)から発信した番組を、メイン会場とサブ会場で受信する。
  サブ会場からの質問を、ファックスでメイン会場に送る。
  メイン会場からの質問、およびサブ会場からのファックスによる質問をメイン会場で取りまとめ、講師(東京)へ質問。講師からの回答を各会場で受信。

【講義の進め方】
・講義(明石講師/東京):20分。
・質疑応答(秋田会場):10分。
・講義(明石講師/東京):20分。
・質疑応答(秋田会場):10分。
・休憩:10分。
・講義(明石講師/東京):20分。
・質疑応答(秋田会場):10分。
・まとめの講義(明石講師/東京会場):20分。

【課題】
・双方向性について
 双方向の利点は、リアルタイムの質疑応答だけでなく、その雰囲気も伝えることで、臨場感あふれる内容になることである。
 今回は、サブ会場には双方向性がなかったので、その場での質問や講師とのやり取りをする機会がなかった。この点については、たとえばサブ会場にテレビ電話を設置し、画面にサブ会場の参加者が映るようにするなどして、サブ会場における臨場感をいかに向上させるかが課題である。
 また、受講者にとって、その場で質問・意見を出すことは難しい。このような「リアルタイムな放送を通じた学習形態」についての学習者の理解がより一層必要と思われる。

・生放送について
 生放送で実施したことによって、講義に和やかさや具体性が出て、よい番組となった。
 技術面では、カメラ・音声・操作等の機械操作に専門性が要求されたが、ほとんどの職員は一度も操作したことはなく、技術研修会を1回行っただけで実施した。今後は、専門的知識を得ながら、年に数回の研修を行い、常時操作可能な状態に熟練する必要がある。
 講師と受講者との間に双方向性を持たせる意義は十分にあるが、生放送という点から考えると、互いの質疑応答の事前予想が難しい。今回は講義のレジュメをあらかじめ受講者に配布して、ある程度の質問を準備したが、 双方向性を保つために、すべてがリアルタイムで公になる電波以外の方法も併用して行う方法を考える必要性がある。


*モデル事業


  (2)テレビ会議システム+SCS(大学間通信衛星ネットワーク)
+地上回線情報ネットワーク エル・ネット(ライブ放送)
   
新潟県立生涯学習推進センター/
新潟大学『「にいがた連携公開講座」2002−エル・ネット特別講座』
「日本海がはぐくんだ地域と文化」
   


【概要】
 10月26日(土)、新潟大学講座『「にいがた連携公開講座」2002−エル・ネット特別講座』「日本海がはぐくんだ地域と文化」(原直史/新潟大学教授)が、新潟県立生涯学習センターが中心となって実施された。
 この講座は、テレビ会議システムによる地域連携講座「にいがた連携公開講座」の中に、エル・ネット特別講座として組み込んだ形で実施された。

【方法】
 新潟県には、エル・ネットのVSAT局が設置されていないため、以下の方法で送受信を行った。
 講師が講義を行っている新潟大学から、SCS(大学間衛星通信ネットワーク)でアップリンクし、岐阜大学でそれを受信する。
 岐阜大学から地上回線で岐阜県総合教育センター(岐阜VSAT局)に送り、エル・ネットにアップする。つまり、SCSとエル・ネットを連結して放送した。
 新潟大学と、新潟会場(県立生涯学習センター/新潟市)、村上会場(岩船広域教育情報センター/村上市)、十日町会場(十日町情報館/十日町市)とは、テレビ会議システムで結んだ。新潟会場と村上会場からは、それぞれ受講生の意見発表が行われた。

【講義の進め方】
・講義(新潟大学/原講師):1時間。
・意見発表(新潟会場/意見発表者):10分。
(村上会場/意見発表者):10分。
・補足講義(新潟大学/原講師が2人の意見発表を受けて補足講義を行う):10分。

【課題】
・双方向性について
 テレビ会議システムの双方向性を生かして、複数の会場から意見発表を行った。この点については、メイン講師以外からも関連のある話を聞くことができ、講義の質に深まりが見られた。主会場からの一方的な話よりもよかった、という意見が多かった。
 今後の課題としては、エル・ネット放送において、双方向性を実現するシステム構築という点である。また、双方向で意見交換を行う場合は、放送時間内に講座を収められるように綿密な計画、準備が必要である。

・システムについて
 SCSを活用することで、エル・ネットのVSAT局がなくても、番組を発信する方策があることが実証できた。しかし、そのためには他県のVSAT局や、そこの中継地点の施設に負担がかかることも承知しておかなければならない。
 また、本来の画質や音声の良さを生かすためには、エル・ネットを利用して直接放送するのがよい。やはり、ライブでクリアな映像や音声を送るためには、エル・ネットVSAT局が必要であろう。


*モデル事業


  (3)衛星(ライブ放送)+携帯電話
   
山梨大学『発達学入門と教育実践学入門』
   

【概要】
 10月26日(土)、山梨大学講座『発達学入門と教育実践学入門』「発達学入門/教育実践学入門」(鳥海順子/山梨大学教授・林尚示/山梨大学助教授)が、ライブ放送で実施された。

【方法】
 オリンピック記念青少年総合センターから、講師による講義がライブ放送で行われた。対談形式の番組構成で、前半と後半とで、2人の講師が互いに質問をし合う形で進められた。講義中、一般の受講者から携帯電話を使って質問を受け付けた。携帯電話の番号をテレビ画面にテロップで出し、その番号に電話をかけてもらう形を取った。

【講義の進め方】
・講義(鳥海講師):30分。
・対談(鳥海講師・林講師/林講師や受講者からの電話による質問に、鳥海講師が回答する):15分。
・休憩:10分。
・講義(林講師):30分。
・対談(林講師・鳥海講師/鳥海講師や受講者からの電話による質問に、林講師が回答する):15分。

【課題】
 2人の講師の対談形式で、講義全体がスムーズに行われた。
 受講者からかかってくる携帯電話を受け、質問をメモして講師に手渡すスタッフが必要である。その際、収録現場では、その声が放送に入ってしまうこともある。また、携帯電話の感度がよくない所では、会話に支障がでるため、できれば有線の電話による質問受付が望ましい。


  (4)衛星(録画放送)+衛星(ライブ放送)
   
静岡大学生涯学習教育研究センター/
静岡大学『やきもの考古学』
   

【概要】
 静岡大学講座『やきもの考古学』(全2回)(柴垣勇夫/静岡大学教授)が、@2月8日(土)、A2月22日(土)に放送された。
 この講座は、静岡大学生涯学習教育研究センターの公開講座『きて見て静大』「やきもの考古学」(全5回)のうち、第1,2回目の講義をエル・ネット「オープンカレッジ」の講座として放送したものである。この2つの講座は、大学で独自収録し、エル・ネット「オープンカレッジ」放送当日に、その録画を放送した。第2回目の講義の放送後、ライブによる実習(やきもの出土品の復元作業)が実施された。このライブ放送時に、VSAT局間での双方向質疑が行われた。

【方法】
 この講座では、やきもの出土品の復元作業が実習として行われる。その実習を、第2回目の録画番組の放送終了後(2月22日/16:03〜16:50)に、ライブ放送で実施した。静岡県総合教育センター(静岡VSAT局)にいる柴垣講師と、香川県教育センター(香川VSAT局)にいる受講生との間で、双方向質疑を実施した。このライブ放送時には、講師と受講生との質疑応答の他、香川会場にいる専門員による香川県の出土陶器に関する報告も行われた。

【講義の進め方】
「やきもの考古学T(日本陶磁史概説)」/2月8日(土):録画放送
「やきもの考古学(古代・中世の陶器とその復元)/2月22日(土):
 録画放送の後、10分間の休憩をはさみ、約50分のライブ放送を行った。香川会場(香川県教育センター)の受講生からの質問に、静岡会場(静岡県総合教育センター)にいる柴垣先生が回答する形で進められた。あわせて、やきもの出土品の復元作業の実習が、それぞれの会場で行われた。最後に、香川会場にいる専門員による香川県の出土陶器に関する報告も行われた。

【課題】
 香川会場では、専門職員3人に対応していただいたため、実習がより充実した講義となった。
この講座を通して、エル・ネットを用いて、遠隔地間で実技・実習を伴う講座を実施する可能性が確認された。エル・ネット「オープンカレッジ」が今後、活性化するために、このような実技・実習を伴う講義形態も考えられる。

*モデル事業
*eラーニング講座開講


  (5)衛星(録画放送)+インターネットチャット質疑応答
   
徳島大学大学開放実践センター/
徳島大学『ホノルルマラソンをインターネット中継しよう!』
   

【概要】
 徳島大学講座『ホノルルマラソンをインターネット中継しよう!』(全3回)(吉田敦也/徳島大学教授)が、1月16日(木)、1月23日(木)、1月30日(木)に放送された。
 この講座は、徳島大学大学開放実践センターの公開講座である「パソコン・インターネット活用総合学習講座『ホノルルマラソンをインターネット中継しよう!』」による展開である。この講座の中では、インターネット学習のステップアップとして、ホノルルマラソンのインターネットライブ中継に取り組んだ。この講座を大学独自収録によりコンテンツ化し、エル・ネット「オープンカレッジ」の講座として放送した。

【方法】
 エル・ネットの録画放送とともに、インターネット上でのストリーミング配信を実施し、放送時にはインターネットチャットを用いたリアルタイム質疑応答、ならびに受講者間交流が行われた。講座は、とくしまITビレッジと那賀川町科学センターにて開講。ITビレッジには、エル・ネット受信装置がないため、移動式受信装置を設置した。

【講義の進め方】
「暮しをつくるパソコン・インターネット」/1月16日(木)
・講義(吉田講師)録画放送:20分。
・質疑応答:(チャットを使った質疑応答・議論をライブ放送で実施):10分。
・講義(吉田講師)録画放送:20分。
・質疑応答(チャットを使った質疑応答・議論をライブ放送で実施):10分。
「技術に向かう楽しさ」/1月23日(木)
・講義(吉田講師)録画放送:30分。
・質疑応答:(チャットを使った質疑応答・議論をライブ放送で実施):10分。
・講義(吉田講師)録画放送:30分。
・質疑応答(チャットを使った質疑応答・議論をライブ放送で実施):10分。
「インターネットライブ中継システムの構築」/1月30日(木)
・講義(吉田講師)録画放送:20分。
・質疑応答:(チャットを使った質疑応答・議論をライブ放送で実施):10分。
・講義(吉田講師)録画放送:20分。
・質疑応答(チャットを使った質疑応答・議論をライブ放送で実施):10分。

【課題】
 アンケート結果からは、受講生が大変熱心に学習し、3回とも満足度の高い講座となったことが伺える。このことは、チャットによるリアルタイム質疑応答を行ったことに大きく関係していると考えられる。講義中、講師との対話が絶え間なく起こり、受講生の質問に受講生が答えるという場面も見られた。また、対話内容から、楽しい雰囲気で学習が進み、建設的な意見交換や新しい発見を得た受講生が多かったようである。このように、インターネットの活用は、エル・ネット「オープンカレッジ」の視聴にさまざまな付加価値を付けられることが実証された。

*モデル事業
*eラーニング講座開講


  (6)衛星(録画放送)+質疑応答(ライブ放送)
   
愛媛県教育委員会生涯学習課/
愛媛大学『街がはぐくむ演劇、演劇がはぐくむ街』
   

【概要】
 愛媛大学講座『街がはぐくむ演劇、演劇がはぐくむ街』(全3回)が、12月6日(金)、12月7日(土)、12月21日(土)に放送された。講座は、大学独自収録され、愛媛県総合教育センター(愛媛VSAT局)から発信した。県内複数の受講施設(新居浜市立別子銅山記念図書館、愛媛県立中央青年の家、内子町内子東自治センター)で、愛媛大学公開講座を実施した形で行われた。
 第3回目の講座は、録画放送後にライブ放送に切り替え、ファックスで受け付けた質問に、ライブ放送で講師が回答した。

【方法】
 講座の第1、2回目は、講座終了後に受講者に質問票を記入してもらい、その内容を集計して大学に送り、最終日までに、講師が回答を準備することができるようにした。第3回目には、講座の録画放送中からファックスで質問を受け付け、講座終了後に前回までの質疑内容と併せて講師が回答した。その質疑応答の部分で、ライブ放送が実施された。


【講義の進め方】
「レビューが生れた街−進化する演劇都市、宝塚−/ブロードウェイ・ミュージカルの世界とニューヨーク」(今泉 志奈子/愛媛大学講師、大野 一之/愛媛大学助教授)/12月6日(金):録画放送

「町民劇場の保存と地域づくり/フランス演劇の舞台をめぐって−パリの劇場とアヴィニョンの演劇祭」(柳 光子/愛媛大学助教授)/12月7日(土):録画放送

「内子座(愛媛県内子町)とグローブ座(ロンドン)/オペラとオペレッタの街、ウィーン」(井上 彰/愛媛大学助教授、安藤 秀國/愛媛大学教授)/12月21日(土):録画放送後、ライブ放送に切り替え、ファックスで届いた受講者からの質問に井上講師と安藤講師が回答した。第1回目と第2回目の講座への質問については、安藤講師と井上講師が、代読する形で回答した。質疑応答のライブ放送部分は約30分で、10ほどの質問に回答がなされた。ファックで届いた質問は、全部で延べ37通であった。

【課題】
住民がエル・ネット受信施設に足を運び、講座を視聴することを推進していくためには、一方通行の講義から、双方向システムにしていくことが重要であることがわかった。今回は、ファックスや質問票による質疑にとどまったが、今後は、メールやチャットによるやり取りやテレビ会議システムなどの導入も考慮しながら、エル・ネットを活用した講義の普及に努めていくことが重要である。

*モデル事業


  (7)衛星(録画放送)+衛星(ライブ放送)+テレビ会議システム
   
宮崎大学生涯学習教育研究センター/
宮崎大学・島根大学『日本文化の源流を探る−日向と出雲の神話と芸能−』
   

【概要】
 宮崎大学と島根大学とが連携して講座を制作し、『日本文化の源流を探る−日向と出雲の神話と芸能−』(全5回)が放送された。第1〜3回は録画放送、第4〜5回はライブ放送で実施された。特に、第5回目では、各会場をテレビ会議システムで結び、全講師によるシンポジウムと双方向質疑を行った。

【方法】
全5回とも、宮崎市の宮崎市教育情報センター(VSAT局)から全国に放送した。全5回のうち、第1〜3回は録画放送、第4〜5回はライブ放送で実施。
第4回目では、地元神楽保存会の方による神楽の実演を行い、いっそう臨場感のあるライブ放送を行った。
第5回目で、宮崎会場(宮崎市教育情報センター)と宮崎県内の3会場(南郷ハートフルセンター・えびの市民図書館・日向市市日知屋公民館)、島根会場(島根大学)とをテレビ会議システムで結んだ。そして、全講師によるシンポジウム(パネルディスカッション)、および各会場からの双方向質疑をライブ放送で行った。また、全国の受講会場からファックスによる質問を受け付け、ライブ放送でその回答を行った。

【講義の進め方】
「日向神話にみられる日本文化」(山田 利博/宮崎大学教授)

/1月18日(土):録画放送

「出雲神話にみられる日本文化」(藤岡 大拙/島根県立女子短期大学学長)
/1月25日(土):録画放送

「出雲の神楽・芸能にみられる日本文化」(白石 昭臣/前島根県立国際短期大学教授)
/2月1日(土):録画放送

「日向の神楽・芸能にみられる日本文化」(山口 保明/宮崎県立看護大学教授)
/2月15日(土):ライブ放送

「日本文化の源流を探る」(全講師)/2月15日(土):ライブ放送
全講師によるシンポジウム(パネルディスカッション)、および各会場からの双方向質疑をライブ放送で行った。

【課題】
・ライブ放送について
 ライブ放送の利点は、講師や受講者が緊張感を持って一体となった形で講義、学習が進められること、その緊張感や臨場感がそのまま遠隔地の受講会場に伝わること、ファックスやテレビ会議システム等での質問に即座に回答できること、などの点があげられる。

・ISDN回線によるテレビ会議システムの利用について
 宮崎県内の3会場と島根大学の計4つの会場をISDN回線によるテレビ会議システムで結び、パネルディスカッションや各会場の受講者からの質問を受け付けた。このようなテレビ会議システムを活用した双方向の講義形態については、約55%の人が「とてもよかった」、あるいは「まあまあよかった」と考えている。しかし、各受講会場からのテレビ会議システムを通じた音声が、衛星通信を経由して放送されたときに聞き取りがたい場面があり、受講者からも音質レベルの向上について希望があった。

*モデル事業


  (8)衛星(録画放送)+質疑応答(ライブ放送)
   
琉球大学生涯学習教育研究センター/ 琉球大学『琉球大学と中国・アジアとの交流史』
   

【概要】
 琉球大学講座『琉球大学と中国・アジアとの交流史』(全2回)が、1月7日(火)、1月14日(火)に放送された。講座は、琉球大学が独自収録した録画番組を、沖縄県教育委員会(沖縄VSAT局)から発信した。第2回目の講座の録画放送後、ライブ放送に切り替え、双方向質疑を実施した。双方向質疑は、県内の高校と結び、高大連携のモデル事業として実施した。

【方法】
 番組収録は、エル・ネットの機材設備のある県立総合教育センターの研修室に県立北中城高等学校の生徒を集めて講義を進め、その模様を録画した。講義はテレビモニターを使用して、事前に撮影した風景や編集した資料を示しながら進めた。
 番組放送は、沖縄県教育委員会会議室(VSAT局)をメイン会場としてスタジオを設置し、サテライトの5会場と電話回線を接続した。スタジオには講師に待機してもらい、サテライト会場で高校生に視聴してもらった。結果として、7高校の生徒が延べ407人受講した。
 放送当日は、最初に収録したビデオをVSAT局から放送し、録画放送後、講師の映像をライブで送り、電話による質疑応答を実施した。サテライト会場では、講師の生の姿を見ながら質問をし、講師は電話での質問に応えるという方式である。

【講義の進め方】
「琉球王国と首里城/琉球とアジアの交流」(高良 倉吉/琉球大学教授)/1月7日(火)
・講義(高良講師)録画放送:50分。
・休憩:10分。
・講義(高良講師)録画放送:33分。
・質疑応答とまとめの講義 (コーディネーターは加藤幹夫氏(琉球大学教授)。県内高校生との双方向質疑をライブ放送で実施):17分。
「琉球の詩人と中国/漢詩に詠まれた琉球」(上里 賢一/琉球大学教授)
/1月14日(火)
・講義(上里講師)録画放送:50分。
・休憩:10分。
・講義(上里講師)録画放送:45分。
・質疑応答とまとめの講義 (コーディネーターは加藤幹夫氏。県内高校生との双方向質疑をライブ放送で実施):15分。

【課題】
 ライブ放送での電話による質疑応答は、機器操作に専門性が要求されるものであった。初めての試みであった上に、職員が機器操作をする頻度が少ないため、民間事業者の協力を得なければ実現が難しかった。今後、収録・編集・放送にかかわる専門スタッフの養成が必要である。
 質疑応答に関しては、生放送で実際に質問が出るかどうか心配な面もあったため、テキストを事前に配布し、予習を心がけてもらった。この点に関しては、講義内容が沖縄の歴史という高校生にも身近な題材であったこともあり、多くの質問が出された。
 講義に引き続いた質疑応答では、講師が通常の講義のように話しかけながら行っていたので、放送全体がライブ放送で進めているように感じられた。

*モデル事業


  (9)衛星(ライブ放送)+テレビ会議システム+e−メール
   
流通経済大学『インターネット社会は積極的に働きかけて生活しよう』
「インターネット社会の世界を学習する」
   


【概要】
 11月2日(土)、流通経済大学講座『インターネット社会は積極的に働きかけて生活しよう』「インターネット社会の世界を学習する」(井川信子/流通経済大学助教授)が、ライブ放送で実施された。この講義では、アメリカのミシガン大学のキング教授から協力を得て、キング教授へのインタビューのビデオを紹介したり、ライブ放送で質問トークを行ったりした。
 生涯学習の場としても知的活動に活用される図書館の近未来像について、アメリカの実情をミシガン大学を例に紹介、質問トークをまじえながら解説された。

【方法】
 国立科学博物館から、講師による講義がライブ放送で行われた。第1部では講義、第2部ではビデオを流した。第3部で、アメリカのミシガン大学とテレビ会議システムで結び、キング教授らと質問トークを行った。
 また、講義中、受講者からキング教授への質問をe−メールで受け付けており、その質問を井川講師が翻訳ソフトを使いながらアメリカ会場とe−メールでやりとりした。まず、受講者からの質問メールを、井川講師が翻訳ソフトを使って英語に直し、ミシガン大学のキング教授に送信する。そして、キング教授から英語で返信された回答メールを、井川講師が翻訳ソフトで日本語に直して紹介した。
 この講義では、ミシガン大学に長期出張中の市川新氏(流通経済大学教授)がコーディネーターとなり、講義全体をサポートした。

【講義の進め方】

・第1部  テキストにそって講義(井川講師):30分。
・第2部 ビデオ(アメリカのミシガン大学キング教授へのインタビュー):25分。
  補足説明(井川講師):5分。
・休憩: 10分。
・第3部 質問トーク
   (井川講師が、講義中に届いた受講者からのe−メールによる質問を、ミシガン大学にいるキング教授へe−メールで転送する。折り返し、その返事がキング教授からメールで届く。翻訳ソフトを活用した。):30分。
 まとめ(ミシガン大学でコーディネートしている市川氏と井川講師によるトーク):10分。

【課題】
 今回は、日本と時差のあるアメリカとリアルタイムでの双方向質疑を実施した。細かな打合せが不十分であったため、アメリカ会場の方で、講義の流れを確認できていない部分があった。海外などの時差のある所とリアルタイムで双方向質疑を行う場合は、タイムスケジュールや段取りなどの事前打ち合わせを十分に行う必要がある。

*eラーニング講座開講


  (10)衛星(ライブ放送)+テレビ会議システム
   
石川県立社会教育センター/
平安女学院大学『ボランティア活動と社会参加』
   


【概要】
 10月11日(金)、石川県立社会教育センターで、平安女学院大学講座『ボランティア活動と社会参加』「ボランティア活動と生涯学習」(坂口順治/平安女学院大学・平安女学院短期大学部学長)を活用した公開講座が実施された。
 これは、生涯学習フェスティバル「第9回高齢化社会参加フォーラム2002in石川」(会場:石川県立社会教育センター)のプログラムの1つとして行われた。公開講座はライブ放送で行われ、テレビ会議システムを利用して講師との質疑応答を実施したものである。

【方法】
 国立科学博物館から、講師による講義がライブ放送で行われた。テレビ会議システムを利用して石川会場(石川県立社会教育センター)とつなぎ、講師と双方向で質疑応答を実施した。
 石川会場では、コーディネーターに岡野絹枝氏(金城大学短期大学部助教授)を迎え、会場の質問をまとめ役をお願いした。

【講義の進め方】
・講義(東京/坂口講師):30分。
・質疑(石川会場/岡野氏が質問をまとめる):10分。
・休憩:10分。
・講義(東京/坂口講師):20分。
・質疑(石川会場/岡野氏が質問をまとめる):10分。
・まとめ講義(東京/坂口講師):10分。

【課題】
 ライブ放送という点で、受講者にとっては、講師との質疑応答を通して生放送に参加している臨場感が得られ、参加意識が高まったようだ。反面、緊張感が高まり、和やかさにかけていたとの指摘もある。講義中、受講者にリラックスするよう促すべきだった。
 テレビ会議システム利用のために、事前準備を十分にする必要があった。この点については、公民館などでは職員が対応しにくい面がある。技術力を投入すればするほど経費もかかり、その点も問題である。できるだけ簡単に対応できるようにすることが、今後の課題である。

*モデル事業


  (11)衛星(ライブ放送)+テレビ会議システム
   
熊本県泗水町教育委員会生涯学習課/
淑徳短期大学『21世紀生涯学習への招待』
   

【概要】
 12月14日(土)、熊本県泗水町中央公民館で、淑徳短期大学講座『21世紀生涯学習への招待』(浅井経子/淑徳短期大学教授、山本恒夫/筑波大学名誉教授)が、ライブ放送で実施された。そこで、テレビ会議システムによる双方向質疑を実施した。熊本県泗水町公民館においては、週2回程度、エル・ネット「オープンカレッジ」を活用し、メニュー選択型の講座を展開している。

【方法】
 テレビ会議システムを利用して、講師のいる東京(国立科学博物館)と青森会場(青森県総合社会教育センター)、熊本会場(熊本県泗水町中央公民館)とを結び、双方向での質疑応答を実施した。

【講義の進め方】
「これからの社会と人生の完成」
・はじめに(東京/浅井講師):2分。
・講義、対談(東京/浅井講師・山本講師):24分。
・質疑応答(青森会場・東京):8分。
・講義、対談(東京/浅井講師・山本講師):12分。
・休憩:5分。
・質疑応答:(熊本会場・東京):10分。
・講義、対談(東京/浅井講師・山本講師):23分。
・質疑応答(熊本会場・青森会場・東京):12分。
・おわりに(東京/山本講師):2分。
「ともに学ぶ地域と私」
・はじめに(東京/浅井講師):5分。
・問題提起@(青森会場):10分。
・問題提起A(青森会場):10分。
・講師の感想(東京):10分。
・質疑応答(東京・青森会場):5分。
・休憩:5分。
・意見発表、質疑応答(東京・青森会場):40分。
・まとめ(東京):10分。

【課題】
 テレビ会議システムによる双方向の質疑応答は初めての試みだった。「地方にいながら東京の講師と直接質問のやり取りができてよい」、「臨場感があり、いつもと違った講義だった」、「カメラには映りたくない」など、さまざまな感想や意見があった。受講者の高い満足度が伺えたが、いつもこのような講座を実施できるわけではないので、住民の身近にどう広げていくか、これから十分検討していく課題である。

*モデル事業