はじめに

文部科学省における衛星通信を利用した研究への取り組みは、平成8年度から3年間実施された「衛星通信利用による公民館等の学習機能高度化推進事業」がある。つづいて平成11年度から実施された、エル・ネット「オープンカレッジ」はその成果を踏まえたものである。

 ここでいう、エル・ネット「オープンカレッジ」は正式には「教育情報衛星通信ネットワーク高度化推進事業」というもので、文部科学省と全国の教育関係施設等を衛星回線で結び、教育プログラム、研修プログラム等を提供し、教育の充実・情報化を推進しようとする事業の一環である。

 マルチメディアは時間的な制約や、空間的な制約をこえて多数の人々に多様な学習の機会を提供する。また活用の工夫によっては、視聴する者の主体的な学習活動を支援する手段として利用できる。その一環として衛星通信を生涯学習に活用できないかということが関係者の関心事項となってきた。

 こういう考えから、さきにふれた平成8年からの事業がはじめられたわけであるが、さらに文部省(当時)の生涯学習審議会では平成11年に「学習の成果を幅広く生かす」という答申を出し、「新たな情報通信手段を活用した高等教育機関等による学習機会の拡充」という項をもうけ、衛星通信を活用した公開講座の拡充を提言した。

 生涯学習審議会では11年の答申についで、平成12年に「新しい情報通信技術を活用した生涯学習の推進方策について」の答申を出し、エル・ネットの活用方策を提言した。

 エル・ネット「オープンカレッジ」はこれらの方針から始まったもので、14年度で4年目をむかえ、15年度が今後の発展を期して、事業のあり方のまとめの年となっている。

 今回の14年度の事業としては、遠隔公開講座を継続的に実施していくための実践的な調査研究を進めた。たとえば衛星通信とインターネットを複合的に活用するeラーニングによる講義の実施などを行い、モデル事業として、高等学校と大学の連携、大学間連携やインターネットチャットによる質疑などの試みが展開された。

 また、講座番組作りの水準向上を図るために、番組評価検討会を発足し、講座番組について多角的に調査し、よりよい番組制作が行えるよう検討を実施しているところである。

 これらの事業の概要をこの報告書に取りまとめるにあたって協力を得た関係者の方々に、厚くお礼を申しあげる次第である。

 なお当協議会では、本「エル・ネット高度化推進事業」とともに「衛星通信を活用して大学の公開講座を広く全国に提供する総合的システムを構築するための調査研究事業」を進めているが、この調査研究の報告書も本報告書と併せてご活用いただければ幸いである。

 平成15年3月

高等教育情報化推進協議会 推進委員会
座 長 齋 藤 諦 淳
(武蔵野大学学長)