.生涯学習におけるeラーニングの活用事例


実践事例5.シニアが中心となってすすめるeラーニング−インターネット市民塾運営ワーキンググループ−


1. NPO法人シニアSOHO横浜・神奈川(略称:SVYK)について
   SVYK(Senior Venture Yokohama Kanagawa)は、元気とやる気とスキルをもったシニアが集まり、それぞれの力を合わせて社会貢献となるようなスモールビジネスを展開する、そのプラットフォームになろうという団体である。「こんなことがしたい」と思い立った人が会員に呼びかけ、賛同した人が集まってワーキンググループ(以下WG)を作る。現在(平成17年2月)、13のWGが、それぞれ独立しながらお互いに協力・連携して活動している(図1)。

図1 13のWG
学びの事業WG
パソコンサポートWG
    シニアド養成G
    エキスパート養成G
    職域研修G
    訪問型パソコンサポートG
インターネット市民塾運営WG
教育情報化WG
eアートライフWG
授けの事業WG
ものづくり支援事業WG
ホームページ・ポータルサイト事業WG
事務の改善WG
リフォームWG
スモールビジネス・ソリューションWG
協働WG
   
   
癒しの事業WG
里山活動WG
スペースあとむWG
交流会WG
   
   
   
   
   
   
2. 各WGについて
   パソコンサポートWGには、4つのグループ(以下)がある。シニアド養成Gは、「シニア情報生活アドバイザー養成講座」を実施している。エキスパート養成Gは、技術分野を細分化し、分野毎にスキルアップを行い、講師としてのノウハウ習得を行うである。職域研修Gは、企業や団体等のニーズに合わせ教室型の研修を行うである。また訪問型パソコンサポートGは、顧客を訪問して、パソコンに関する問題解決をサポートする。

 教育情報化WGは、学校ならびに教育ソフト会社を対象に、教育委員会・学校などと協働して教育情報化の支援活動を行っている。eアートライフWGは、パソコンを使って水彩画を描く指導している。インターネット市民塾運営WGは、インターネット上に、学びあいの場「e−市民塾みらい」を作り、運営している。

 ものづくり支援事業WGは、「ものづくり」にかかわるあらゆるフェーズで支援する技術集団である。営業企画、情報通信、機械・設備、図面・データ、建築・プラント、生産管理、品質・管理の7専門チームで構成されている。ホームページ・ポータルサイト事業WGは、団体・個人のホームページおよびポータルサイトの製作、更新維持の支援を行う。

 事務の改善WGは、企業および個人事業主に対して、事務の改善について提案、支援を行うグループである。

 リフォームWGは、主に高齢者世帯の住居改修サービスを目的として設立された。

 スモールビジネス・ソリューションWGは、企業の業務効率化(業務プロセスの改善、標準化、システム化)をデータベースアプリケーションの構築を通じて実現することとIT技術者養成を支援し、各種ソリューションを提供するWGである。

 協働WGは、行政、団体、企業、などとの連携を、企画・開発・実施するである。

 里山活動WGは、未来を担う孫、子たちがもっと自然に親しみ植物や生物を大切にして自然と共生できる環境を作り、保全していく活動を行っている。

 スペースあとむWGは、不登校や引きこもりの方たちの支援を行っている「NPO法人スペースあとむ」の活動への参加・協力を行う。

 交流会WGは、SVYK会員と会の内外の個人ならびに団体との幅広い交流の場を提供し、交流の輪が広がるようにまたその絆が太くなるように取り組んでいる(このWG解説は2005年2月のものであり、WGは新設、分化、統合などにより、変更されることがある)。
   
3. e−市民塾みらい
   e−市民塾みらいは、インターネット上に構築された学びあいの場である。それぞれの人が持っている経験や知識や技術を、お互いに教えあい、学びあうための「場」を提供する。

 インターネットにつなげるパソコンがあれば、いつでも、だれでも、どこからでも、学ぶことができ、教えることができ、また運営に参加することもできる。押入れに眠っている、自分では使わないけれど誰かの役に立つかもしれない品をフリーマーケットでリサイクルすることを想像してほしい。誰もがもっている知識や経験や技術も、同じように多くの人の役に立てるはずである。

 SVYK設立と同時にWGを立ち上げ、幸いニフティ株式会社からサーバの提供をいただくことができた。システムの構築などはすべて自力、メンバーの手作りでサイトを作り上げてきた。立派な門構えとはいえないかもしれない。まさにフリーマーケットの会場である。スタートから半年後に、トップページとサンプルの数講座を配信できるe−市民塾みらいが姿を現した(図2)。

  図2 e−市民塾みらいが形づくられるまで
   
4. e−市民塾みらいのコンテンツ
  (1)現在配信中のコンテンツのタイプ
 専門的な内容の講座(「参画理論」など)、専門家に尋ねながら共に学ぶ講座(「伝統横浜スカーフ物語」など)、自分が学んだことを伝える講座(「労働基準法を知ろう」など)、専門家ではないが、自分のもっている知識や技術を伝える講座(「パソコンとなかよく」など)、このほか、講座ではないが、パワーポイントなどを学んだ成果も発表している。配信中のコンテンツは成果発表も含め約40である。

(2)コンテンツの形式
 「.html」、動画、動画とスライドの組み合わせ、スライド、が現在配信しているコンテンツの主な形式である。最近は、ブログなども利用している(「よこはまピックアップ」)。また、今後に向けて、Xoops、Moodle、PushCornなども検討している。
   
5. e−市民塾みらいのWGメンバーについて
   現在、インターネット市民塾運営WGに登録しているメンバーは、約40名いる。SVYKでは、複数のWGに参加することができるので、このWGに主力をおいている人ばかりではない。しかし、イベントを開催するときなどは、Gのメンバーだけでなく、SVYKの会員が皆で協力してくれる。
   
6. WG内の組織
  インターネット市民塾運営WGの中には、現在3つのがある。
TF−A(コンテンツ作成) コンテンツの企画、作成を行う。
TF−B(サイト整備) システムの構築や、サイトの整備を担当している。
TF−C(講座担当) コンテンツ作成の助けとなる講座を企画、開催する。
   
7. コンテンツ作成を援助する講座
  (1)「講座を創るための講座」
 パワーポイント実技、著作権など守るべき事項、生産講座作成法などを学ぶ。30ページほどのテキストはTF−Cが作成した。

(2)パワーポイント実習講座
 パワーポイントで3ページのサンプルと、オリジナル作品を作成し、パワーポイントの操作を覚え、発表する楽しさを味わう。テキストはプリント2枚。パワーポイントは、プレゼンテーションにも役立つので、大変人気がある。また、このアプリケーションソフトは、動画との組み合わせや、テレビ会議などへ、利用範囲を広げることができるので、力を入れている。
   
8. イベント
 

写真1 ワークショップの様子

写真2 展示会場風景
(1)横浜市市民活動共同オフィス発連続講座 第10回(写真1)
 インターネット市民塾フェア(平成16年9月25日)では、横浜の歴史的建造物(旧富士銀行)を会場に、メロウ倶楽部若宮正子氏の電子紙しばい、横浜国立大学 林義樹教授の参画理論ワークショップ、県立横浜清陵総合高校生徒による発表など、eラーニングをキーワードに幅広い世代にご講演いただき、大変好評であった。

(2)フォーラムよこはま展示とイベント(写真2)
 同年11月には、みなとみらい21地区のランドマークタワーで、講座内容の展示(1週間)とイベント(1日、パワーポイント実習体験会)を開催した。パワーポイント単独の講座は、この時から始まった。
   
9. 今後の課題
   やっとここまできた、というのが正直な現在の心境である。昨年10月に、「試行中」という但し書きを取り外したが、まだまだ「満足」というには程遠い状態、人間で言えばヨチヨチ歩きの赤ん坊といったところだろうか。それでもここまでの道のりを手作りで歩んでこられたことを嬉しく思っている。これからも「フリーマーケット」を手作りで開いていくつもりである。

 今後の課題として、行政との連携と採算性のある運営の2点に取り組んでいきたい。

 横浜、神奈川は大きな自治体だ。行政との連携については、ほんの少し手がかりを得たばかりだが、「生涯学習による町づくり」を旨に、小さな実績を積み重ね、行政との連携を築いていきたいと思う。地元横浜国立大学との連携も大切に育てていきたいことのひとつである。

 採算性については、魅力的なサイトづくりを心がけ、お金を払っても参加したい、役に立つ、興味深いeラーニングの講座を開発することが何より肝要かと思う。パワーポイント講座が好評なので、この受講生から「発信する講師」を発掘。また、受講生が講座を開催しやすくなるような有償の講座を新たに開拓し、開催していく。

(NPO法人シニアSOHO横浜・神奈川 e−市民塾みらい理事 山田ともこ)