. 海外訪問調査

英国調査報告
渋谷 英章

3.Department for Education and Skills (DfES―教育技能省)

〔訪問日〕2004年3月2日
〔面談者〕 Mr. Pravin Jethwa, National Grid for Learning Division(写真4)


 DfESでは、生涯学習におけるICTの活用に関する政策的な方向性についての情報を入手するつもりであったが、面談者は主として学校におけるICTの利用の担当者であったため、学校教育の現状をうかがった上で、生涯学習との関連について質問した。

 英国では現在、学校教育においてICT機器の活用が精力的に進められている。現在 DfESには主務大臣、副大臣を含めて6名の閣僚がDfES内のさまざまな役割を分担しているが、ICTは主務大臣が直接に担当しており、プライオリティが高い。学校教育予算の3分の1が用いられるなど、政府は ICT教育に積極的に投資している。

学校教育におけるICT利用に関しては、60校を対象にした3年間の追跡調査(ImpaCT2)を行っており、その結果、ICTの利用が児童生徒の学力向上に効果的であることが数字の上で実証されている。これは英国が世界で初めて行った調査であり、他国からも注目されている。また、英国政府はEvidence Driven Policy(根拠にもとづいた政策推進)を方針としており、このような投資効果に関する実証的データを示すことにより予算獲得が可能となっている。


写真4 
Pravin Jethwa氏(中央)
 現在は、すべての教科でICTを導入することが考えられている。その場合には、Curriculum Onlineにより、すべての教員が容易に教材を入手できるシステムが望まれる。ただし強制ではなく、教員の自発的な利用を促進することに留意しなければならない。なお、現在は45%の学校がブロードバンドに接続している。

 また、児童生徒がコンピュータ画面に向かって学習するだけでは学習の個別化を招きかねないため、現在では集団での学習という学校教育の特性を生かし、電子黒板を利用した教室でのインタラクションを促進させている。

2006年へ向けた優先施策は、すべての教員が一人1台のラップトップ・コンピュータを所持する状態にすることと、11歳から14歳のKey Stage 2において「数学」、「ラテン語」、「日本語」の教材開発を推進することである。とくに「日本語」など優秀な教員が不足している教科では、ICT利用の教材開発の必要性が高い。

 さらに、ICT設備が充実している学校をコミュニティに開放する可能性については、とくに農村地域では必要性が高いであろうとのことである。