.調査研究にあたって

調査研究の意義と目的
山本 恒夫

 この調査研究は、最先端の情報機器を利用し、情報をいつでも入手して学習することができるようにするために、新しい情報機器の活用方策を探ろうとするものである。平成15年度は、特に社会教育分野に焦点をあて、情報機器やシステムの活用方策について国内外の現状調査を行うこととなった。

 具体的には、国内の場合、多地点を結び、学習活動の交流を図りながら学習を進めるところに新しい情報機器やシステムを活用する可能性を探ることにし、国外については、主としてイギリスの状況を調査することにした。

  生涯学習推進の中での情報機器やシステムの活用方策については、平成12年に生涯学習審議会から答申「新しい情報通信技術を活用した生涯学習の推進方策について ─ 情報化で広がる生涯学習の展望」が出されている。そこでは、社会教育分野での新しい情報機器の活用についての多くの提言がなされたが、学校教育と比較すると、まだあまり進んでいない。

  平成16年3月に中央教育審議会生涯学習分科会から出された生涯学習振興方策に関する審議経過報告でも、ITの活用は今後重視すべき観点とされている。学習資源に関しても、学習資源を創造、蓄積し、共有することが重要であるとして、学習者が自ら作ったり、探したりした学習資源を発信することや、そのような学習資源を利用した学習者がさらにそれに自らの学習成果を付加していくことにより、創造,発信,蓄積,共有の循環を生みだし、より広がりと深みのある学習資源にしていくことへの期待が述べられている。今回の調査研究も、新しい情報機器を活用して学習資源を創造,発信,蓄積,共有していく道を開拓しようとするものである。

  我が国の目指す生涯学習社会は、国民のだれもが生涯のいつでも、どこでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価されるような社会とされている。そこには、「学習機会を選択して学ぶことができる」ような仕組みがなければならない。

  学習機会や学習資源に関していえば、学習ニーズの多様化・高度化に応えるためには、学習機会や学習資源等を増やすことが必要だが、新しい情報機器の活用はその可能性を広げてくれる。また、学習機会の選択に関しても、新しい情報機器の活用により豊富な学習機会や学習資源を用意できるようになれば、選択幅は拡大される。

  生涯学習にあっても、これまでは、講義と討議・実験・実習・見学などの伝統型学習中心であった。これからはメディア型学習が増え、伝統型学習とメディア型学習の融合的学習が一般的になっていくに違いない。そのような時代の到来に備え、このような調査研究で、新しい情報機器の活用方策をいろいろと探ることは、大きな意義を有するものである。