2 訪問調査

岡山県教育センター
調査実施日 平成14年11月8日
調査対応者 佐々木弘記(岡山県教育センター教育経営部指導主事)

施設の概要
  施設名 岡山県教育センター   開設 平成48年4月1日
  設置者 岡山県
  所 長 門野八洲雄
  〒703-8208 岡山市古京町2-2-14
  tel:086-272-1205(代) fax:086-272-1207
  e-mail:kyoikuse@pref.okayama.jp
  ホームページ http://www.edu-c.pref.okayama.jp/
  交通機関 JR岡山電気軌道(東山行)・岡山駅→東山下車徒歩10分
          両備バス 岡山駅   古京下車10分     

1.研修の内容・方法に関して(一般的事項)
 教育工学に関する講座の中で、視聴覚教育に関連する内容としては、パソコンを活用したプレゼンテーションやデジタルコンテンツの制作などがある。教育工学的な視点から、教科等の授業で効果的な視聴覚教育が実現するよう、授業の設計や評価を中心に講座を行っている。情報教育に関する講座については、情報教育センターと役割分担している。
 ・教育工学に関する講座の中で、視聴覚教育に関連あるもの
  総合的な学習の時間研修講座(マルチメディアプロジェクト)2日間、68名(定員200)
  発表表現を取り入れた授業改善研修講座 3日間、23名(定員24)
  教育機器研修講座(初級)(液晶プロジェクターを使った授業)2日間、38名(定員24)
  教育機器研修講座(中級)(デジタルコンテンツの制作)2日間、29名(定員24)
  教育メディア実践講座(魅力的な学校ホームページの制作)3日間、25名(定員20)
  【教育工学実践講座(ポートフォリオ評価入門)3日間、27名(定員24)

2.研修の企画・内容の決定に関して
・誰が、どのようにして研修を企画し、内容を決めているか?
内容は、センター担当者レベルで企画立案する。

・研修の企画・内容決定の際、何を参考にするか?
講座最終日にアンケートを実施しており、講座の反省材料にしている。
学校現場で緊急な課題となっていることを講座に取り上げるように心がけている。

・「カリキュラムの標準」は研修の企画・内容決定の際の参考資料として有用であるか?
「カリキュラムの標準」の存在は知っていたが、あまり内容を参考にすることはなかった。今回、改めて見直したが、内容の一部が時代の進展に合ってないように思える。

3.予算措置に関して
・1回の研修に割り当てられる予算はどの程度であるか?
実践発表者の旅費、講演講師の旅費・謝金、印刷費などを積算している。

4.研修の開催回数などに関して
・年間に何回程度、視聴覚メディア研修を行っているか?
教育機器研修講座は初級と中級を各1回ずつ実施している。その他マルチメディアやプレゼンテーション、ホームページの制作など3講座を実施している。この5講座の外に初任者研修や教職経験者研修などで、視聴覚メディアや情報機器の活用に関する講座を行っている。デジタルコンテンツの制作講座は今後、特に充実させていきたい。予算や会場の関係もあり、1講座当たりの開催日数はいま以上に増やすことはできない。

・地域の必要な場所に出掛けて出前研修などを行っているか?
今年度は行っていない。来年度から教育工学関係で実施する予定である。

5.広報・周知の方法に関して
・研修(募集)の周知はどのようにして行っているのか?
各学校に研修案内(冊子)の形で送付している。直前には内容の概要をチラシで送付することもある。また、研修案内はHPに掲載している。

6.研修のねらい(目標)に関して
・研修のねらいをどのように決定しているのか?
講座担当者が決定している。

・研修のねらいを受講者に明示しているか。受講者は研修のねらいを理解しているか?
募集要項等に明示している。ほとんどの受講者はねらいを理解している。

7.研修の内容に関して
・「カリキュラムの標準」に示されている内容のうち、実施しているものは?
研修カリキュラムII「基礎コース」の「総論」は、視聴覚教育の現状と課題/教育におけるコンピュータの利用の意義/教育における通信システムの利用の意義/教材作成の理論と技術/メディアについての教育(著作権などを含む)を実施している。
「教育メディア各論」は、ほとんど実施しているが、取り扱いは軽くしている。理論をじっくり講義する時間がないのが現状である。
「教育メディア特講」は、ワープロ、表計算、グラフィック/ネットワークの概念/通信システムの種類/情報検索の基礎(インターネットの活用)で講座を構成している。

・実施と実施しないものについての意見

  「総論」について
地域の視聴覚教育支援体制の現状/施設内における教育メディア利用の協力体制/教育におけるデータベースの利用の意義は行わない。
(実施しない理由)教職員研修を主体に限られた日程で実施するため。データベースについては情報教育センターで行っている。

「教育メディア各論」
各種視聴覚教材の選択と評価は取り上げていない。
(実施しない理由)16ミリ映写機、スライド、CAI教材などは、現状に合わないので実施していない。

「教育メディア特講」
OSとアプリケーションソフト/簡易言語によるプログラミング/オーサリングシステム等による教材作成/データベース・システムの基本機能等は実施しない。
(実施しない理由)OSではWindowsの基本操作で十分と考える。プログラミングやオーサリングによる教材開発には時間がかかるので、プレゼンテーションソフトで代用している。データベースについては、その概念を説明する程度である。

・標準案にないものを加えている事例
現在は、ビデオ教材に代わって、デジタルコンテンツが主流になりつつある。そこで、講座では、パソコンを利用したビデオのノンリニア編集を通して、デジタルコンテンツの作成を行っている。

8.設備・機材の確保の状況および利用の形態に関して
・研修機材の確保の状況はどうか?
保有機材だけでは不足している。最新の機器も使いたいが、必ずしも整備されていない。
・研修機材確保のための方策はどうか?
特に講座の多い夏期には、ビデオカメラなどの不足分はレンタルして補っている。
・研修機材の利用形態はどうか?
パソコンは原則として1人1台である。現在は、24台である。そのうちデジタル編集が可能なパソコンは9台であるので、ノンリニアビデオ編集は小グループで行う。ビデオカメラやデジカメなど台数に限りがあり、ケースバイケースである。

9.研修担当者および講師の配置に関して
・主任担当者の配置について
基本的には、専任1名で実施している。
・講師の配置について
講座は主に、講義、実践発表、演習、講演などから成る。講義は担当者が実施する。実践発表については、学校から1〜2名の実践発表者を招聘する。その発表者が演習の講師をしたり、演習の補助を務めたりもする。講演については、大学などから外部講師を招聘している。受講者何人について何名の講師を充てるという原則はない。

10.受講者の内訳と定員確保の状況に関して
・定員、受講者数について
定員を定めているが、定員を超えても受け入れている。多いときには3ローテーション組んだこともある。

・研修の定員(募集)枠をどのような基準から決めているのか?
施設・設備の関係から決めている。

・定員確保の状況はどうか?
平常日の講座は9割程度のこともあるが、夏休みの講座はほとんどが100%を超えている。メディア実践講座とか教育工学実践講座などの講座の名称では、受講者に「内容が難しそうだ」というイメージを与え、敬遠されがちなので、親しみがあり、講座の中身が分かりやすい具体的なサブタイトルを付けている。

・受講者の内訳はどうか?
すべて学校教員(管理職は含まない)。

・受講者のグループ分けなどでの配置・工夫はどうか?
特になし(映像編集でも2人1台までの小グループで実施)。

・受講者の募集人員について
予算及び施設の関係があり、あらかじめ設定するが、超えても受け入れている。

・遠距離からの受講者に対して、なんらかの準備があるか?
すべて学校の県費旅費できている。センターからの特別な補助はしていない。

・定員を超える申し込みがあった場合に、どのように対応しているか?
ほとんど受け入れている。2人に1台とかローテーションで対応している。

・受講者確保のために考えられる方策や、求められるカリキュラムの改善点は?
内容がよく分かるような具体的なサブタイトルを各講座に付けている。また、チラシなども有効である。今後は、プレゼンテーション、特に電子ホワイトボードを授業に活用する講座を検討したい。

11.研修の進め方に関して
・講義と実習との関係について感じていることはあるか?
講義と実習のバランスを考慮している。実習の最後には、完成した作品を発表し、授業で効果的に活用できるかどうかといった視点で評価している。

12.研修の評価に関して
*研修内容、講師についての評価の方法
研修終了後にアンケートを実施している。講師は、感想などを口頭で尋ねている。

13.次年度以降の研修計画に関して
*一般的な意見
デジタルコンテンツの授業での活用が重視されていることから、コンピュータ教育開発センター(CEC)などが提供している既存のデジタルコンテンツの活用方法に関する研修や、デジタルコンテンツを自作する研修に重点を置きたい。

14.現在の「カリキュラムの標準」に関して
・現在のカリキュラムの有効性、有用性について
「カリキュラムの標準」の存在は知っていたが、あまり参考にすることはなかった。訪問調査の依頼があり、改めて見直したが、現在の教育機器の現状に合致していないところが多々あるように思える。

・現在の「メニュー方式」「大項目方式」(地域の状況に答える方式)について
特になし。新しい内容や方向性は参考としたい。

・メディア別研修(カリキュラムI)について
情報モラルの指導は欠かせないと思う。

・現在の国(カリキュラムII・専門)・県(カリキュラムII・基礎)・市町村(カリキュラムI)の分担について
基本的には分けたほうがよいと思うが、共通項目としてはインターネットが挙げられる。補助金が付かなければ、実効性がないカリキュラムの標準となってしまうのではないか。

・地域の各教育機関との連携の現状
教員対象の研修機関なので、各教科の研究会や情報教育センターなどとの連携に止まっている。

15.新・「カリキュラムの標準」の策定に関して
16ミリやスライドなどのメディアは、現在あまり使われなくなったので、歴史的な紹介にとどめる程度でいいのではないか。「メディア」という言葉については、受講者の中には、新聞や放送といったマスメディアのイメージを抱く人も少なくない。デジタルコンテンツの制作・活用などを組み込んだ新しいカリキュラム標準に一新するべきではないか。

[大浦 哲雄]