戻る
新たな取り組みについて

2.広報について
<広報委員会委員> 
   
部会長 仲野  寛 (島根大学生涯学習教育研究センター教授)
委 員 四元 正弘 (電通総研業務企画部研究主幹)
柵  富雄 (富山インターネット市民塾推進協議会事務局長)
近藤 真司 (財団法人全日本社会教育連合会「社会教育」編集長)

<委員会開催日>
   
第1回広報委員会 平成15年 7月9日(水)
第2回広報委員会   8月26日(火)
第3回広報委員会   10月1日(水)
第4回広報委員会   12月9日(火)
広報の在り方
   エル・ネット「オープンカレッジ」は、これまで、限られた地域でしか受講できなかった全国の大学公開講座を、衛星通信の特性を利用して全国規模で同時に配信する事業であり、受信装置さえあれば全国どこでも高画質で受信できる画期的なシステムである。さらに、近年は、インターネットのブロードバンド環境の整備も進み、インターネットによる配信も可能となってきており、多様な配信システムによる多彩な活用方法が可能となりつつある。
 しかし、現状においては、その利用が衛星受信装置を備えた施設に限られていること、また、講座内容とその活用方法が担当者や一般市民に十分に周知されていないことにより、全国でその活用が十分に進んでいないのが実情である。
 本委員会は、このような活用の実態を鑑み、より多くの国民にエル・ネット「オープンカレッジ」の存在を周知し、その活用を促進するための広報活動の方策について協議を行ってきた。
 また、協議する際の基本的な考え方として、エル・ネット「オープンカレッジ」の運用の仕組みについては、放送メディアの多様化を踏まえた上で、現状の運用形態を基軸に、1.これまでの広報活動の総括(内容と方法の分析と評価)、2.これからの広報の在り方、3.広報をより効果的にするための課題等について協議することとした。
 以下、委員会で検討した内容を中心にこれからの「広報の在り方」について報告する。
                                                              (仲野 寛)
   
〔1〕これまでの(エル・ネット「オープンカレッジ」)広報活動の概要
   平成14年度以前の広報活動としては、主に公民館等の受信施設や教育行政関係者を対象としたものが中心で、パンフレット、ポスター、エル・ネット「オープンカレッジ」Newsの配布等を行ってきた。それぞれの発行部数、および配布先、配布数は、以下の通りである。
     
  発行部数
  ポスター パンフレット News
平成11年度 10,000部 31,000部
平成12年度 11,000部 37,000部 各回115,000部
平成13年度 11,759部 66,795部 各回72,843部
平成14年度 12,073部 60,365部 各回80,721〜88,491部
備考 H11はA2版
H12,13,14はB2版
H11,14は2つ折り
H12,13は3つ折り
(A4版)
H12,13は年5回発行
H14は年4回発行
(A4版、4〜8ページ)


 ポスターは、エル・ネット「オープンカレッジ」を周知するためのものである。配布は、エル・ネット受信施設の約2,000か所へ各2部、および広報先(大学・短期大学本部・高等専門学校・都道府県市町村教育委員会・教育事務所・全国公民館〈分館を除く〉・全国教育研究所)の約8,100か所へ各1部行った。
 パンフレットは、新規講座についての概要(大学名・講座名・講義名・講師名)を掲載したものである。配布は、エル・ネット受信施設へ各10部、および広報先へ各5部行った。なお、パンフレットは、社会教育関係の全国大会等(全国図書館大会・全国公民館研究集会・全国社会教育研究大会・視聴覚教育総合全国大会)での一括配布も行った。
 エル・ネット「オープンカレッジ」Newsは、平成12年度から発行しており、内容は、エル・ネット「オープンカレッジ」の放送予定、講座や講師の紹介、公開講座の活用事例等の情報である。また、各年度の最終版では、各モデル事業の主な内容の報告を掲載している。配布は、エル・ネット受信施設の約1,600か所へ各50部、および広報先(教育委員会・各学校等)の約350〜530か所へ各1部行った。
 以上に加えて、インターネットWeb上での広報活動も実施した。エル・ネット「オープンカレッジ」ホームページ(http://www.opencol.gr.jp)は、平成11年10月4日に公開し、平成14年10月1日には、リニューアルを行った。アクセス数については、年ごとに増加してきている。ちなみに、平成14年8月〜平成15年3月末までのアクセス数は、
191,230件であった。ホームページの内容は、「受講者向け」には、受講の流れや講座内容の情報等、「受信局向け」には、公開講座を開くためのマニュアル等、その他として、参考資料等をアップしている。
 以上のような広報活動を行ってきたが、受信施設や教育行政関係者に十分に活用されているとは言えない状況であった。また、一般市民や受講者に対する広報は十分ではなく、エル・ネット「オープンカレッジ」が周知されていないのが現状であった。
                                                               (事務局)
 
〔2〕広報の在り方の概要と方向性
 

 今後、地方の生涯学習推進の関係者やエル・ネット受信施設の担当者はもちろん、一般市民にも、「オープンカレッジ」を生涯学習の学習機会として認知していただき、講座の活用施設と受講者の拡大を図る必要がある。特に、担当者や受講希望者には、「オープンカレッジ」をいかに活用するか、また、一般国民には、エル・ネット「オープンカレッジ」そのものの存在を知ってもらい関心を高める必要がある。
 そのため、本協議会の広報委員会では、これまでの広報活動を総括し、広報の在り方について協議を重ね、広報活動に関しては、大きく2つの方向で行うことが必要であると意見の集約がなされた。

  「認知」されるための広報(一般市民・受講者に対する広報)
 国民の大多数が「オープンカレッジ」の存在を知らない状況において、具体的な活用キャンペーンを行っても大きな効果は期待できない。身近な施設で受講できるエル・ネット「オープンカレッジ」の存在をアピールし、大学公開講座に対する好ましいイメージを持っていただく必要がある。
 従って、多くの国民にもっと「オープンカレッジ」の存在を周知するために、マスメディアを使った広報が必要である。具体的にテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などのマスメディアを使って、「オープンカレッジ」の存在を全国規模で国民に認知してもらうための広報活動を推進する。
 そのためにも、マスメディアを活用した直接的な広報の予算化を検討するとともに、エル・ネット「オープンカレッジ」に関する文部科学省の記者発表や催しの取材などを積極的に展開し、メディアに取り上げてもらう間接的な広報活動も推進する必要がある。その際に、著名な講師や国民の関心の高いテーマの講座などについては、内容を集約したスポット的な広報ビデオを作製し、マスメディアに提供したり、インターネットのストリーミ
ングで流すことも有効と考えられる。
  また同様に、県・市町村段階の広報においても、地域の「オープンカレッジ」に関する催しや講座内容、施設の情報をこれまで以上にマスメディアに提供するとともに、公共の広報紙などにも掲載してもらうよう積極的に働きかける必要がある。
 以上の点からも、今後は、まず総合的な視点からエル・ネット「オープンカレッジ」のパブリシティを推進していくことが求められている。

「活用」のための広報(受信施設に対する広報)
これまでの受信施設に対する調査で、施設の担当者がエル・ネット「オープンカレッジ」に対する関心が低いこと、また、「オープンカレッジ」のことを知っていても、その活用方法について十分な知識がないことが明らかになっている。
 そのため大多数の受信施設では、偶然、「オープンカレッジ」の情報を得た市民が受講者となり、単に受講するだけで終わってしまい、集まった人々の継続的な学習や幅広い市民が参加する学習活動が展開できていない状況にある。このことは、「オープンカレッジ」の受講が一過性の学習機会でおわり、組織的、計画的な学習システムへの継続的な発展が望めないことを意味している。
 本事業のシステムが、受信施設に「オープンカレッジ」を配信し、地域の住民が受講することで成り立っている以上、教育機関・団体や受信施設の担当者の果たす役割は非常に大きいものがあると言わざるを得ない。
 従って、これからは、受信施設や教育関係機関・団体の担当者、地域の学習ボランティアをコーディネーター(サービサー)と捉え、従来どおりの紙情報やインターネット・ホームページで提供する具体的な「オープンカレッジ」情報に加え、コーディネーター向けの活動支援型の広報を展開する必要がある。
 例えば、これまでモデル事業などで蓄積した「オープンカレッジ」の活用方法をマニュアル化し、これを配布するとともに、地域ブロック単位で講座活用のための講習会を開催したり、コーディネーターのための相談窓口を設けるなど多彩な支援活動を展開する必要がある。

  以上が広報活動の2つの方向性であるが、今後、このような活動を通して、受信施設などの担当者がサービサーとして、高等教育レベルの学習機会に潜在的・顕在的学習関心のある地域住民の学習行動を喚起するような広報、また、地域の様々な学習団体への講座活用に結びつくような広報を展開できるようになり、受講環境の整備とともに受講者が増加することが期待される。
 また、このような段階を経て、受講者のための会員制度を整え、学習活動の継続を支援する意味合いからも、直接「オープンカレッジ」の情報が届くような仕組みづくりを広報活動の一環として考えることも必要となってくるものと考えられる。
                                                              (仲野 寛)


   

(1)一般市民への広報について

  広報と広告
  「広報」という言葉を英語に訳すと“public relations”。つまりは、社会・大衆との関係をスムーズに構築するのが広報の役割である。企業の場合、会社の全員が、その企業の顧客や潜在ユーザーではないが、企業が社会的存在である以上、商品を使っているいないを超えて社会全体に何らかのメッセージを伝えていく必要があり、それを担っているのが「広報」というコミュニケーション活動なのである。
 その一方で、主に顧客や潜在ユーザーに対して商品にまつわるメッセージを発信する活動は、いわゆる「広告・宣伝」に当たる。
  このように、そもそもの定義的にも、実際の活動レベルでも、「広報」と「広告」はまったく異なる。「広報」は社会との良好な関係作りのために、消費者の枠を超えて幅広い層に対して行うコミュニケーションなの対して、「広告」は消費意欲の喚起を目的に(潜在)消費者に対して行うコミュニケーションなのである。「広報」と「広告」は、企業が大衆に向けて何らかのメッセージを出しているという点で一見類似しているが、両者を混同してはいけない。にもかかわらず両者を混同しているのが、今のエル・ネット「オープンカレッジ」ではあるまいか。だとすれば、なんという悲劇、いや悲喜劇と言うべきであろう。
 今、エル・ネットに必要なコミュニケーションは「広告」である。もっと、有体に言えば、もっと勉強したいと思っている一般市民を対象に、彼らの勉強意欲を喚起する広告が必要なのである。それは明らかに「広報」の範疇ではない。その活動を「広報」と呼ぶか、「広告」と呼ぶか、というのは瑣末な問題だ。重要なのは、実態としての「広告」を行わなければ、ユーザーの増加には繋がらないということをもっと認識することである。

二つの広告 −アドバタイズメントとプロモーション−
 さて、いわゆる「広告」には二種類がある。アドバタイズメント“advertisement”とプロモーション“promotion”だ。広告業界の人間でも、この二語の違いを理解せずに単なる言い換えくらいにしか考えていない者が多いが、これら語源を知ればその違いがよく理解できよう。アドバタイズ“advertise”は、冒険“adventure”の類似語で、「引き寄
せられて前に出る」という意味である。
 つまり、広告メッセージに触れることで、商品への関心がムクムクと湧き上がってくることを示している。このように、商品のことが気になる状態を作るのが、アドバタイズメントの効果である。通常はテレビ、新聞などのマスメディアを使って、発信される。
 それに対して、プロモーション“promotion”は、「前へ」を含意する“pro-”と、動くこと“motion”が合わさってできた言葉で、日本語に訳すと「一歩前へ」。アドバタイズメントで関心を喚起されて売り場に出向いて商品を手にするとき、消費者の背中を押して実際の購入を実現させるのがプロモーションの役割なのである。店頭でのポスターや実演、POP、クーポン券などがプロモーションとしてよく用いられる。
 そして、この点も極めて重要なのだが、効果的なプロモーションを実施するには関係者の教育が不可欠だ。売り場でのプロモーションにはいろいろな形態がある。店頭に目立つポスターを貼るのもプロモーション。おまけを付けるのもプロモーション。クーポン券を置いておくのもプロモーション。
 しかし、最大のプロモーションは、なんと言っても店員の接遇である。例えば「お客様、よくお似合いですよ」という一言がお客を最後に買う気にさせるのだ。従って、その商品の「売り」「強み」について、日頃から店員も勉強しておく必要がある。そのような関係者教育こそがプロモーションの基礎なのだ。
 このように、アドバタイズメントとプロモーションのベストミックスによって、広告は最大の効力を発揮する。どちらか一方だけでは、どんなにその出来が良くても、やはり効果は限定的だ。両方のタイプのコミュニケーションが揃って、はじめて消費者の心を動かすことができる。
  最後にまとめると、広告に必要なコミュニケーション機能は以下の3つにある。 
   アドバタイズメント
     一般ユーザーに対して、マスメディアを使って商品名や特徴を簡便に伝え、消費者の消費意欲を喚起する。
   プロモーション
     ある程度消費意欲が喚起された消費者に対して、主に店頭で「買う気」にさせる。ポスター、おまけなどさまざまな方法があるが、最も強力なのはリアルな接遇の中でのプッシュの一言。
   インナーコミュニケーション
     プロモーションの準備の一環として、商品の特徴や優位性を店頭関係者に浸透させるためのコミュニケーション。関係者用資料や勉強会を使って、周知を徹底するのが一般的。
       
  エル・ネットの広報のあるべき姿とは
 では、以上のことをエル・ネットに応用するとどうなるであろうか。まずはアドバタイズメントの側面を考えてみよう。
  これは協議会から一般ユーザーに対して直接的に情報発信することにより、一般ユーザーにおけるエル・ネットの認知や理解を促進するコミュニケーションである。現状では、全くと言ってよいほど、この手のコミュニケーションが行われていない。これでは利用者が増えないのも当たり前である。テレビにも新聞にも広告を出さないで、商品を売ろうと言うのと同じである。
  今後は、マスメディアの利用も視野に入れながら、インターネットやイベントなどでの情報発信を積極的に行って、向学心のある一般の人に、エル・ネットの存在をまずは知ってもらうことから始めるべきだ。
 マスメディアは一挙に認知を高めることに有効ではあるが、多額の費用を要するというデメリットもある。費用対効果の面から、情報を届けたいターゲット層に的を絞ったメディア戦略が重要だ。例えば、自己啓発誌やシニア向け雑誌が、エル・ネットの広告メディアとして適しているように思われる。
                                                             (四元 正弘)
       
(2)エル・ネット受信施設及びエル・ネット担当部局への広報について
  インターネットと紙媒体
 エル・ネット「オープンカレッジ」の広報において、ひとつには、インターネットを使うもの(ホームページ、メールマガジン)。もうひとつは従来型『紙』媒体がある(広報紙、パンフレット、チラシ、ポスター等)。
 インターネットを使う広報は、「受信施設」の環境に左右されるがこの1年でかなり改善されつつあり、推進協議会から送信された「コンテンツ情報」をうまく加工して使うことが可能になってきた。最終的には受講者に対して、仲介・中間組織としてその情報の『編集』がなされなければ、広報はうまく機能しない。

使いやすい「素材」の提供を
 エル・ネット「オープンカレッジ」高等教育情報化推進協議会からエル・ネット受信施設及びエル・ネット担当部局への広報には、その事情に対応した方策をとらなければならない。現在、公民館は予算の見直しにより、分館や地域館から専門職員を引き上げ、中央公民館にその資源を集約する方向にあるところが多い。社会教育専門職員が手薄になっている。
 現状のエル・ネット「オープンカレッジ」受信施設がその機能を十分に引き出すには、広報の送り手であるエル・ネット「オープンカレッジ」高等教育情報化推進協議会側から、作業を簡素化し、負担にならないことをはっきり示す必要がある。
 地域の高度な学習ニーズは一段と高まるなか、エル・ネット受信施設及びエル・ネット担当部局の立場になって考える必要がある。現場の少ない時間で効果的なエル・ネット活用のメリットを訴求する必要がある。現状のエル・ネット「オープンカレッジ」newsに加え、公開講座開設手順書または、開設した自治体、施設の事例紹介、また、基本にもどった『Q&A』が必要なのではないか。職員の異動により、新年度からは、「素人」と考え
てもいいくらいである。

多様な使い道を社会教育職員に知らせる、職員を勇気づける工夫を
 受信施設の職員にエル・ネット「オープンカレッジ」の有効性をさらにわかりやすく訴求する工夫が必要になってくる。いままで受信施設にパンフの配布は、各受信施設10部ずつ行ってきた。ポスターの配布は、各2部である。反応の薄いところと、比較的人員がいそうな規模の、例えば市町村の中央公民館レベルに「広報」を集中させる手法もある。
 パンフは各施設で、コピー可としているが、次年度はさらにすすめて、「おすすめの講座を公民館報にそのまま印刷してもらって結構です」というコメントを入れるとか、「どんどんコピーをして下さい」という表現に改める必要がある。
 いま、公民館の現場で抱えている課題解決のヒントになるような番組があることを、はっきり打ち出す。「この講座のねらい」を強調した、『エル・ネットとらの巻』などを現状の番組案内パンフと別立てで送付することも必要ではないか。そういう木目の細かい作業を1年間やってみる必要があるのではないか。社会教育主事などが担当していれば、学習グループに広報していこうという発想は出てくるはずである。
                                                             (近藤 真司)
   
(3)生涯学習関係機関及び学習団体への広報について
  生涯学習関係機関への広報
 地域の学習者と直接的に接する、生涯学習関係機関職員は、エル・ネット「オープンカレッジ」の受講を促す上で、きわめて大切な広報対象と考える必要がある。社会教育主事など、関係機関職員の役割としては、学習機会に関する情報提供のほか、個人や学習団体からの学習相談に応じており、この学習相談の中でエル・ネットの活用を勧めることが期待される。
 また、市民の学習ニーズや地域課題をタイムリーに捉え、市民の学習機会として積極的に提供する「サービサー」としての役割が極めて重要であり、今後は「サービサー」の活動に目線を合わせ、活用支援型の広報を検討していく必要がある。
 エル・ネット「オープンカレッジ」の番組は、単独で完結する形で利用するほか、市民の学習テーマに応じた学習プログラムの中に効果的に組み込まれることで、活用機会を大きく拡大できる可能性を持っている。
 具体的には、学習ボランティアやまちづくり活動のリーダーなど、ほかの地域の取組みを参考にしながら、地域の人材育成を進めることや、相談員が女性の例では、女性のキャリアアップ支援、子育て支援などの学習プログラムの中で、地域でのグループ学習や個人学習と組み合わせ、専門家の講義を聞く方法として、効果的に活用することが期待できる。
 一方、関係職員にエル・ネットについて関心を持っていただくための提案も必要である。多くの職員に共通するテーマ、たとえば著作権に関する番組を提供し、自らが受講者となって活用することも有効である。

学習団体等への広報
 学習団体のニーズとしては、集い一緒に学ぶこと自体に意義を持つグループだけでなく、NPOを作り地域の問題を解決していこうというグループも増えてきている。今後はこれらのNPOやボランティア団体への積極的な広報が重要である。これまでは、生涯学習関連施設等に向けて広報を行ってきたが、これらのグループの活動に目線を合わせて、たとえばボランティア支援センターなどの施設に広報することも考えられる。
 これらの学習グループでは、地域活動の中で専門的な知識を持った講師を、エル・ネットを利用して呼ぶというスタイルでの活用が考えられる。また、同じテーマで活動する各地のグループが参加し、双方向性を生かした事例研究に活用することが考えられる。
                                                              (柵 富雄)
 
(4)受信施設エリアの受講対象者への広報について
   受信施設エリアに在住する住民に対する広報活動は、エル・ネット「オープンカレッジ」を「認知」していただく一般的な広報に加え、高等教育レベルの講義に対し学習関心のある地域住民や学習団体の学習行動を喚起するような、前述の「広告・宣伝」に該当する手法が求められる。
 そのためには、まず、受信施設側にエル・ネット「オープンカレッジ」を受講することの意義と活用方法を十分に理解していただくことが必要であり、その上で、地域へ学習機会を提供することへの積極的な取り組みが求められる。この点については、後で詳細に記述するが、受講希望者を受け入れる受信施設が前向きに取り組まなければ広報活動はうまくいかないことは、これまでのモデル事業の募集でも明らかになっている。
 では、具体的な広報手段としては、インターネット等を活用した広報に加え、住民の多くが目にする市町村行政の広報紙、公民館等の施設の広報紙、自治会の回覧板、オフトークなど行政の広報手段に依存する場合や、新聞、テレビ・ラジオなどのマスメディアの「お知らせ」コーナー等を利用した広報、新聞折込チラシなどの直接的広報がある。それぞれメリット・デメリットがあるが、費用対効果からも行政の広報を活用する場合が多く、今後も地域住民への周知を鑑みると最も有効な方法と考えられる。
 次に、広報の内容であるが、従来からの住民の学習活動の状況を考慮しながら、住民が関心を示す講座内容と一番受講しやすい講座日程を配慮した、学習プログラムを示す必要がある。また、これまでのモデル事業における住民の学習活動から、事前に各講座の講義内容の概要を紹介されることで、講座への関心が高まることも明らかになっており、簡潔に講座内容を示すことも広報には有効である。以下、参考までに講座を選択する際のポイ
ントをいくつかあげる。
    地域住民の学習ニーズを考慮した講義
 (個人の趣味・教養を高める内容、生活・職業的関心事を満たす内容など)
今日的に注目を浴びている国内外の課題をテーマにした講義
その地域の日常的な講座では、受講することのできないテーマの講義
地域の直面する課題の理解を深めたり、課題解決に結びつくような講義
その地域の歴史・文化の理解に結びつくような講義
これからの「地域づくり」に役立つような講義
   また、これまで講師の直接講義に慣れ親しんできた住民に対しては、「衛星受信による講義であるが、全国の大学の講座が視聴できること、講師の講義を一方的に聴くだけでなく、後で疑問や不明な点を質疑できること」等のメリットも強調した広報活動を展開する必要がある。さらに、広報の一方で、受講希望者は受講方法や講座内容などについて、初めて受講しようとする場合は不明な点が多いため、受信施設側に受講相談の窓口を設けることも必要である。この相談の結果、受講に結びつく場合が多く見受けられる。
                                                              (仲野 寛)
   
〔3〕広報をより効果的にするための課題
(1)コーディネーター(サービサー)の役割と養成
   本事業が、基本的に受信施設に「オープンカレッジ」を配信し、地域の住民が受講することで成り立っている以上、直接、地域住民に講座を提供する立場にある地方教育行政や受信施設の担当者等の果たす役割は非常に大きいものがある。従って、これからは、地方教育行政や受信施設の担当者、地域の学習団体の代表者、地域の学習ボランティアなどの方々を地域住民とエル・ネットのコーディネーター(サービサー)として捉え、「オープ
ンカレッジ」の活用を推進するキーマンとして、その役割を重視するとともに、必要な情報を提供したり、能力を高める講習などを実施し養成する必要がある。
    エル・ネットのコーディネーター(サービサー)の役割としては、
それぞれの地域にあった学習形態を考慮した、エル・ネット「オープンカレッジ」を活用した学習機会(学習プログラム)を地域住民に提示すること
高等教育の公開講座に潜在的・顕在的学習関心のある地域住民の学習行動を喚起するような広報活動を展開し、受講者を募集すること
また、地域の様々な学習グループ・団体がエル・ネット「オープンカレッジ」の講義を活用した学習活動に結びつくような活用方法を提示し、広報活動を展開すること
地域住民がエル・ネット「オープンカレッジ」を活用した学習活動がスムーズに展開できるよう、受信施設における学習環境の整備を行うこと
「オープンカレッジ」の受講が一過性の学習機会でおわらないよう、集まった受講者の会員制度的な組織化を図り、継続的な学習活動を支援する情報提供ができるシステムを構築すること
  等が考えられる。
 次に、エル・ネットのコーディネーター(サービサー)の養成については、まず、協議会が養成カリキュラムを検討するとともに、過去のモデル事業などを参考に「オープンカレッジ」の活用事例をマニュアル化しテキストを作成する必要がある。実際の講習は、受信施設が、全国2,200か所もあることからも、全国をいくつかの地域ブロックに分け、逐次、地方都市を会場に実施することが現実的である。
 また、今日の地方行政の財政状況を鑑みるに講習への参加経費についても、何らかの補助が必要となることも検討しなければならない。さらに、彼らが「オープンカレッジ」の継続的な活用を支援する意味合いからも、情報提供を含めた相談窓口を設けるなど多彩な支援活動を展開する必要がある。
                                                              (仲野 寛)
   
(2)「オープンカレッジ」の講座内容の予告方法
    予告する内容について
    〇講座ごとに、モデル的な学習プログラムを提供する
       たとえば、地域活動における学習のねらいを示し、地域の現状を事前に調べてきた上でエル・ネットを受講するなど、事前課題を提示。受講後のディスカッションの論点や、今後の活用に向けての課題の整理など、学習プログラム例をあらかじめ示すことで、地域での参加募集を取組みやすくすることができる。また、受講における学習効果を高めることができる。
    〇講座の概要を収録した予告映像を提供する
       学習者にとって、講座のレベルが期待に合うかどうかは、受講申し込みにあたって不安をもつことが多い。講師の雰囲気を感じ、どのような立場の人が参加し、テーマの深さはどの程度かが分かるように、講座の中のシーンをピックアップしたダイジェスト、または説明用の収録をあらかじめ行い、提供することが考えられる。可能であれば、これまでの受講者のディスカッションの様子を紹介することも考えられる。
    〇テキストを広く提供する
       講座テキストを見て受講を決める場合も多く考えられる。都道府県が運営する学習情報提供システムや、関連するホームページなどから、講座テキストを手軽に取り出し、受講申し込みの参考にできるよう、働きかける。講座テキストは募集パンフレットの一つとしても位置づける。
       
    利用するメディア
       これまでの紙媒体による配布のほか、インターネットをさらに効果的に活用する。
    〇各種団体のメーリングリストでの案内の協力を得る
       NPO、ボランティア団体等、地域レベルや全国レベルでメーリングリストを活用している団体は多い。これらの団体に協力を求め、講座の紹介を行う。
    〇Webコンテンツとして予告映像を提供する
       エル・ネットのホームページから直接的に提供するほか、都道府県関係機関のホームページからリンクする形で、広く提供のきっかけを持つ。
    〇CD-ROMによる配付
      上記のコンテンツをCD-ROMに収録し、関係施設等に配付する。
                                                               (柵 富雄)
       
(3)「オープンカレッジ」受講経験者への継続的広報と会員制度
   「オープンカレッジ」受講経験者をリピーターとするような方法を考えていくと、受講経験者への継続的広報が大事になる。おおむね現在の「オープンカレッジ」受講経験者の年齢等を勘案すれば、「紙」メディアをベースとした(電子メディアをサブ)広報が大事になってくる。数多くの「オープンカレッジ」番組から、受講となりうる人の立場にたった広報手段を考える必要がある。ここで留意したいのは、いままでのように、行政が受講者のために行うことをやめることである。「受講者のために」となると行政施設の都合が優先し、その「枠」の中でしか発想が拡がらないからである。
 それでは、「受講となりうる人の立場にたった広報」とはどんな物になるであろうか。それは受講者が自ら考えていくように支援することである。社会教育関係職員が大筋の方向性のみを示し(全国でのエル・ネットの動向や市民グループがささえる事例の情報など)受講者(たち)がその応用、活用方法を考えるようにもっていくのが望ましい。
  現在社会教育施設のボランティアが盛んである。図書館の読み聞かせグループ、博物館の案内グループなどが多数活躍をしている。国立科学博物館の友の会組織やボランティアのしくみは参考になる。ここで主なエル・ネット受信施設である公民館や生涯学習センターについて、エル・ネット利用者の力を引き出すことが大事である。
 全国のエル・ネット受信施設である公民館や生涯学習センターで「オープンカレッジ」受講経験者の番組の評判はおおむね良い(東京都府中市生涯学習センターアンケート等)。いま、行政改革、自治体の財政の見直しから、社会教育施設の運営を指定管理者制度等により市民参加を求めていく方向が示されている。
 そこで、会員制度の提案をしたい。エル・ネット利用者の友の会をつくることである。エル・ネット受信施設である公民館や生涯学習センターに関わる「エル・ネット利用・活用」をコーディネートすることまで含めた学習グループづくりである。具体的には、エル・ネット番組をうまく組み合わせたチラシづくり。公民館等での入り口近くに掲示板や
手作りのポスターを作成。番組受講後のサロンづくり。反省会。番組に対するアンケートの実施。その内容を盛り込んだ「広報紙」の作成。手分けして地域の関連機関(役場、駅、スーパーマーケット、商店街等)に配布する。
 このような一連の流れを社会教育関係職員が受講経験者に「手順」を示し、実際には受講経験者の会(仮称:エル・ネット倶楽部)を立ち上げ、広報の役割を担ってもらうことが、「オープンカレッジ」受講経験者への継続的広報につながっていくことであろう。
 社会教育関係職員は人事異動等で変わることも多い。地域の受講者が自ら「広報」をつくるように、またその成果(まとめた記事等)を自治体の広報紙や教育報などにも転用できるとさらにいい。
                                                             (近藤 真司)
   
広報構成図


戻る