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モデル事業

3.地域の公開講座を開くために
エル・ネット高度化推進委員会 副座長
山本 恒夫
   平成15年度のモデル事業で新たな進展があったのは、ただ「オープンカレッジ」を施設で学習者に視聴してもらうということから、更に進んでそれを活用した生涯学習支援を行おうとする傾向が強まったことである。具体的にいえば、地域にある県民カレッジや市民カレッジ等と関連させて「オープンカレッジ」を活用したり、録画を各地で活用する仕組みを作ったりというようなことがそれに当たる。今回のモデル事業の中で得られた成果や出てきた問題点を整理すると、地域で「オープンカレッジ」を活用した公開講座を成功させるための留意点が浮かび上がってくる。これからは、そのようなことを蓄積し、地域での公開講座を開き易くしていく必要があろう。
  そこで、ここでは、そのいくつかをまとめて整理しておくことにしよう。ただし、ここでいう公開講座は、いうまでもなく遠隔公開講座として行っている「オープンカレッジ」のことである。
 まず第1は、「オープンカレッジ」を視聴するだけでなく、集合学習形態を併せ導入して学習者の交流の場を作ることである。
 その有効性は、ここ数年のモデル事業で確かめられてきている。「オープンカレッジ」などの遠隔教育で個人学習が出来れば、もう集合学習はいらないという声があったが、むしろ逆で、それを求める声が強まってきているように思われる。学習者の声を聞いても、在宅で視聴するだけでは不十分であるとする人が多い。勿論、これは内容によっても違いがある。しかし、これまでの社会教育の経験によって編み出された講義と話し合いを半々
にするという方法は、「オープンカレッジ」でも効果があるように思われる。
 第2は、録画をため、活用していくことである。「オープンカレッジ」は非常に多くの分野の講義があるが、録画をためていけば、ある程度は分野別の蓄積が出来る。地域でそれをうまく利用すれば、これまでにない公開講座を開くことが出来、新たな道も開けてくるに違いない。そのためには、ライブラリー的な拠点を作り、講義リストを作っていく必要がある。
 このようなライブラリー的拠点は、メニュー方式で学習をしていく場合の欠席分を補充するためには有効であり、さらには、視聴したことをもう1度復習的に見て学習したいという人のためにも必要である。オンディマンドで必要な講義を活用することが楽に出来るようになれば、「オープンカレッジ」のこのような活用は増えるに違いない。
 第3は、放送された講義のすべてを視聴するのではなく、必要に応じてその一部を活用することも考えるということである。
 第1のところで述べた集合学習形態を併用する場合、1回の学習時間を2時間とすると、講義をすべて視聴することによって、話し合う時間が不足することもある。そのため、15年度のモデル事業でも、1つの講義を2回に分けるとか、講義の1部だけを活用するといった工夫がみられた。それには、録画によって事前にかなりの準備をしなければならない。その作業はかなり大変なので、事前の準備についての方法の開発も必要である。
 第4は、公開講座に補助的な講師をおくことである。
  先に述べた事前準備は公開講座担当の職員だけでは無理なことが多いし、公開講座を開いたときにも、集合学習形態を併用する場合には、職員の他に補助的な講師が必要である。今回のモデル事業でも、そのような講師を委嘱している例があるが、効果をあげている。
 しかし、「オープンカレッジ」のような場合には、地域で即戦力となるような人材を得ることが難しいことも多い。したがって、これからは、最近よく言われるようになったITと生涯学習支援の両方の知識と技術を持つ生涯学習支援コーディネーターないしは中間的リーダーの養成が必要であろう。しかし、今、それをすべての地域に求めても無理なので、国レベルでの対応が求められる。
 これに関しては、平成16年3月29日に出された中央教育審議会生涯学習分科会「今後の生涯学習の振興方策について」(審議経過の報告)の中で、国の役割として「指導者等の研修と研修教材の作成など、生涯学習振興を担う人材の養成」があげられており、国として早急に取り組まなければならない課題の1つのように思われる。

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