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モデル事業


(8)沖縄・島根エル・ネット「オープンカレッジ」モデル事業報告
   − テレビ電話機能付携帯電話での双方向質疑の可能性 −
沖縄・島根エル・ネット「オープンカレッジ」モデル事業実施委員会
(琉球大学生涯学習教育研究センター)

1.実施の趣旨
   本モデル事業は、琉球大学と島根大学の連携により、「海流の文化を探る−琉球から出雲へ−」と題して、沖縄・島根両県の文化を解説し、地域の文化を考える内容とした全4回からなる講座の提供を中心に、担当した講義を双方分担して独自収録し、講座の最後に沖縄会場と島根会場間を結んで、テレビ電話機能付携帯電話を使用したライブによる双方向の質疑応答の有効性について調査研究するとともに、第15回全国生涯学習フェスティバ
ル「まなびピア沖縄2003」開催時に、エル・ネット「オープンカレッジ」の広報を兼ねたプレ講義を「まなびピア会場(移動受信局)」で放映し、テレビ電話機能付携帯電話を使用した3元のライブによる双方向の質疑応答を企画・実施することとした。
 
   本モデル事業における特徴を簡潔にあげると以下のとおりである。  
 
 沖縄・島根両県に共通性のある講義を独自収録し、沖縄県VSAT局(沖縄県庁内)から放送。講義終了後に沖縄・島根間でライブでの双方向質疑応答を実施。
 「まなびピア沖縄2003」開催時に独自収録したプレ講義を沖縄県VSAT局から放送。まなびピア会場にも放映して、3元のライブでの双方向質疑応答を実施。
 テレビ電話機能付携帯電話を双方向質疑に利用。
 
2.事業の内容等
(1)講座の概要
   沖縄、島根両県は、それぞれ独自の歴史と文化を持っている。しかしながら、この両県におけるさまざまな文化をみたとき、たとえば、漁労文化、稲作文化、食文化、宗教的儀式などにおいて共通点があることに気付かされる。これは、おそらく海流が影響しているのではないかと考えられる。そこで、本講座では、両県の文化を解説するとともに、それらを比較し、海流のかかわりについて探りながら、地域の文化を考える機会とした。共通のテーマのもとで異なる二県の地域素材を比較検討することは、講座の内容を深めるだけでなく、他県とのかかわりをも提起するものである。
 また、平成15年11月27日〜12月1日まで、沖縄県で『第15回全国生涯学習フェスティバル「まなびピア沖縄2003」』が開催される機会に、エル・ネット「オープンカレッジ」の広報を兼ねて、沖縄県教育委員会との連携の下、本講座のプレ講義を琉球大学公開講座として沖縄県VSAT局から放送して、沖縄県VSAT局、まなびピア会場(移動受信局・沖縄県宜野湾市立体育館)、島根会場(受信局・島根県江津市二宮交流館)の3元でテレビ電話機能付携帯電話を使用した双方向の質疑応答を実施した。
  全4回の講義のうち、その構成上、第1回〜第3回を琉球大学の提供及び独自収録とし、第4回を島根大学の提供及び独自収録とした。「まなびピア沖縄2003」におけるプレ講義
については、当初、生放送を予定していたが、事業の万全を期すため、最終的に講義は録画放送することとし、琉球大学での独自収録とした。
 
(2)講座プログラム
「海流の文化を探る−琉球から出雲へ−」全体プログラム
回数 講 義 名  講  師 放送日時 放送形態
プレ
講義
「海からみた琉球史・序章」 豊見山 和行
 〈琉球大学助教授〉
平成15年
11月30日(日)
15:00〜15:30
録画放送、
片方向
(質疑応答) 11月30日(日)
15:30〜16:10
ライブ放送、
双方向
 「海からみた琉球史T・U」
T 海産物でつながる琉球と中国・日本
U 海上交通史の諸相からみた琉球世界
平成16年
2月21日(土)
13:00〜14:50
録画放送、
片方向
「沖縄の祭りと信仰」 赤嶺 政信
(琉球大学教授)
2月21日(土)
15:00〜16:50
録画放送、
片方向
「沖縄の食文化」 萩尾 俊章(沖縄県教育庁文化課文化財係長) 2月28日(土)
13:00〜14:50
録画放送、
片方向
「出雲の祭りと民俗文化」 白石 昭臣(島根県古代文化センター客員研究員) 2月28日(土)
15:00〜16:30
録画放送、
片方向
(質疑応答) 上記の全講師 2月28日(土)
16:30〜17:00
ライブ放送、
双方向
   
3.事業の実施経過
(1)プレ講義
 
 
      リハーサル
 
平成15年10月9日(木)13:00〜15:00
  沖縄県VSAT局、島根会場間でのテレビ電話機能付携帯電話のテスト
平成15年11月29日(土)18:30〜19:30
  沖縄県VSAT局、まなびピア会場、島根会場間でのテレビ電話機能付携帯電
話のテスト
   
  〔リハーサルの概要〕
   「まなびピア沖縄2003」におけるプレ講義での質疑応答のため、実際にエル・ネットを使用してテレビ電話機能付携帯電話のテストをした。10月9日(木)には、沖縄県VSAT局と島根会場とで、放送前日の11月29日(土)には、沖縄県VSAT局、まなびピア会場、島根会場との間で行った。受信会場からのテレビ電話機能付携帯電話の画像が、質疑応答に適するかどうか、受信局でのテレビ電話機能付携帯電話の取り扱い、被写体との距離、照明、音声等について、最適となるようにテストした。
   
      大学独自収録〈琉球大学での収録〉
 
平成15年11月25日(火)10:00〜12:00
  「海からみた琉球史・序章」(講師:豊見山和行 琉球大学助教授)の収録
  〔収録の概要〕
   昨年のモデル事業では、エル・ネット機材設備のある沖縄県立総合教育センターを利用したが、今回の収録は、収録・編集を担当してもらう本学の教官1名で行うこととし、県のエル・ネット機材は使用せず、外部スタッフの応援も求めなかったので、機材の移動や収録時の受講者(琉球大学の学生及び大学院生)の出席等の利便性を考慮して、琉球大学生涯学習教育研究センターの講義室を使用した。講義は学生・大学院生を前にした教室形
式で進め、テキストではわかりづらい資料や写真を事前に編集してテレビモニターに示しながら進め、その模様を収録した。
  収録に使用した講義室は専用スタジオではないので、騒音や室温の問題点を少しでも軽減すべく、沖縄県の気候を考慮し、収録日をプレ講義実施の間近と迫ったタイミングで行った。このため、編集に充てるパソコン処理の日数が短くなり、担当教官にかなりの無理をお願いすることになった。
   
      放送
 
平成15年11月30日(日)15:00〜16:10
 「海からみた琉球史・序章」(講師:豊見山和行 琉球大学助教授)の放送及びテレビ電話機能付携帯電話による双方向の質疑応答
   
  〔放送の概要〕
   沖縄県VSAT局をメイン会場としてスタジオをセットし、沖縄県VSAT局から編集ビデオを放送した。講師にはスタジオに待機してもらい、ビデオ終了直後に、メイン会場、まなびピア会場、島根会場の間をテレビ電話機能付携帯電話で結んでのライブによる双方向の質疑応答を実施した。
   
(2)本講義
      大学独自収録
     〈琉球大学での収録〉
 
平成16年1月14日(水)13:30〜16:00
  「沖縄の食文化」(講師:萩尾俊章 沖縄県教育庁文化課文化財係長)の収録
平成16年1月28日(水)13:30〜16:00
 「沖縄の祭りと信仰」(講師:赤嶺政信 琉球大学教授)の収録
平成16年2月2日(月)13:30〜16:00
  「海からみた琉球史T・U(T 海産物でつながる琉球と中国・日本、U 海上交通史の諸相からみた琉球世界)」(講師:豊見山和行 琉球大学助教授)の収録
     〈島根大学での収録〉
 
平成16年2月1日(日)14:00〜16:00
 「出雲の祭りと民俗文化」(講師:白石昭臣 島根県古代文化センター客員研究員〈元島根県立国際短期大学教授〉)の収録
   〔収録の概要〕
    〈琉球大学での収録〉
   プレ講義と同様に、収録は、収録・編集を担当してもらう本学の教官1名で行うこととし、琉球大学生涯学習教育研究センターの講義室を使用して琉球大学の学生・大学院生を前にした教室形式で進め、テレビモニターに予め編集した資料や写真を示しながらその模様を収録した。
    〈島根大学での収録〉
   双方向の質疑応答時の島根会場となる島根県江津市二宮交流館の研修室において、受講者を前に実際の講義の進行どおり収録を行った。収録は、(株)沖縄映像センターのスタッフが当たった。講義でプロジェクターを使用した写真等の資料については、講義終了後に別撮りし、収録ビデオを編集した。
 
   
       放送
 
第1回 平成16年2月21日(土)13:00〜14:50
 「海からみた琉球史T・U(T海産物でつながる琉球と中国・日本、U海上交
通史の諸相からみた琉球世界)」(講師:豊見山和行 琉球大学助教授)の放送
第2回 平成16年2月21日(土)15:00〜16:50
 「沖縄の祭りと信仰」(講師:赤嶺政信 琉球大学教授)の放送
第3回 平成16年2月28日(土)13:00〜14:50
 「沖縄の食文化」(講師:萩尾俊章 沖縄県教育庁文化課文化財係長)の放送
第4回 平成16年2月28日(土)15:00〜16:30
 「出雲の祭りと民族文化」(講師:白石昭臣 島根県古代文化センター客員研究員〈元島根県立国際短期大学教授〉)の放送
質疑応答 平成16年2月28日(土)16:30〜17:00
 全講師によるテレビ電話機能付携帯電話を使用した双方向の質疑応答
   
  〔放送の概要〕
   2月21日放送の第1回及び第2回の講義、2月28日放送の第3回及び第4回の講義は、沖縄県VSAT局から収録ビデオを放送した。2月28日に第1回〜第3回の講師は沖縄県VSAT局に、第4回の講師は島根会場に待機してもらったうえで、ライブでの双方向の質疑応答に臨んでもらった。第1回〜第3回の講義を収録時に受講した学生及び大学院生は、沖縄県VSAT局〈教室形式にアレンジ〉に集合し、放送している第4回の講義を受講した後、島根会場の受講者とともに、ライブでの双方向の質疑応答に臨んでもらった。質疑応答は、VSAT局と島根会場の間をテレビ電話機能付携帯電話で結んで実施した。
   
4.事業の成果と今後の課題
(1)講座の内容及び独自収録
  琉球大学で実施した昨年のモデル事業においては、高大連携事業の一環として琉球と中国・アジアとの文化交流史を取り上げたところ、高校生・学校から高い評価を得、一応の成果をあげることができたとの認識のもと、今年度は島根大学との連携による地域の文化を考える内容の講座を企画した。共通のテーマによる両県の文化を紹介した内容は、地域住民の方々に興味を引くものであった。
 2回目となった琉球大学での独自収録は、昨年の経験をもとに、外部の手を借りずに琉球大学独自で行った。そのため、今回も担当教官の個人的力量に頼らざるを得なかった。また、講義の収録時にテレビモニターに示す資料、写真、動画の事前の編集作業がプレ講義を含めて4講義分となり、このための作業量が膨大であった。
 モニターを使って講義をする方法は、講義を単調にしない、テキストの資料等を補う、受講者の理解度を高める、など効果的であるが、本学で行っているパソコン処理による編集方法は、個人の力量によるところが多いので、今後改善していく必要がある。
   
(2)プレ講義
   本年度は、沖縄県で全国生涯学習フェスティバル「まなびピア沖縄2003」が開催される機会を得て、本モデル事業において、エル・ネット「オープンカレッジ」の広報を兼ねた「プレ講義」を実施できたことはたいへん意義のあるものであった。
 「まなびピア沖縄2003」の会場となった沖縄コンベンションセンターの一角にある宜野湾市立体育館には、未来科学広場として大型の3面マルチスクリーンを配置した「みらいステージ」がセットされ、この「みらいステージ」に移動受信局を配して、マルチスクリーンにプレ講義を放映した。プレ講義は、フェスティバルの4日目(11月30日〈日〉)の
午後に割当てられ、会場に集まった方々に受講してもらった。日曜日ということもあって、会場には約100人が集まり盛況であった。
   
(3)質疑応答におけるテレビ電話機能付携帯電話の使用
   質疑応答は、プレ講義では、沖縄県VSAT局、まなびピア会場、島根会場の3元で、本講義では、沖縄県VSAT局と島根会場の2元で、それぞれ双方向で行った。VSAT局の講師等の映像・音声は、衛星を介して受信会場で放映し、受信会場での質問者等の映像・音声は、テレビ電話機能付携帯電話で送信したものをVSAT局のISDN回線によるテレビ電話で受信し、さらにまた衛星を介して受信会場で受けるという仕組みとした。テレビ電話機能付携帯電話の画像の解像度や音声がライブの双方向の質疑応答の使用に耐えるものかどうかが心配された。受信した画像は、解像度が十分とは言えず、文字資料を映し出すことは困難であり、また素早い動きには対応できず画面が流れてしまうが、テレビ電話機能付携帯電話のカメラの前で質問をする程度では、顔の表情もわかり、音声も明瞭に聞こえ、双方向の質疑応答への使用には問題なかった。本モデル事業では、テレビ電話機能付携帯電話の使用によって、送信設備や専用のスタジオ・放送機器などがなくても、双方向で質疑応答できることが実証され、テレビ電話機能付携帯電話の有効性の点で大きな成果があった。
 テレビ電話機能付携帯電話は、電波の送受信の安定度や映像上の制約等を十分考慮し、本モデル事業のように質疑応答に使用するなど、その用途を選定すれば大いに活用できる媒体である。今後その性能が上がれば、さらに用途が広がるものと思われる。


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