訪問調査施設名 京都市視聴覚センター(京都市)

回答者 辻  喜則

(京都市生涯学習総合センター 
 事業部視聴覚課 指導主事・社会教育主事)

調査担当 伊丹 和哉 (新潟県立生涯学習推進センター 
 学習情報課 社会教育主事)
  下川 雅人 (財団法人日本視聴覚教育協会次長)



1.施設の概要

名 称: 京都市視聴覚センター
所在地: 〒604-8401 京都市中京区聚楽廻松下町9−2
電 話: (075)802-3139 FAX:(075)802-5100
交 通: バス「丸太町七本松」下車
E-Mail: asny4@mbox.kyoto-inet.or.jp
ホームページ: http://web.kyoto-inet.or.jp/org/asny1/
設置者: 京都市   設置根拠:京都市総合センター条例・規則
組 織: 視聴覚センター長(生涯学習総合センター長と兼務)/視聴覚課長/視聴覚係長 /指導主事/技術職員3/事務職員2
建物面積: 2,791m2
施設内容: スタジオ・調整室/教材制作室/視聴覚室/暗室/ビデオ・フィルム保管室 /教材準備室/視聴覚資料室/ホール/事務室/その他
教材保有数: 16ミリフィルム 3,592本 /ビデオテープ 6,179本

2.沿革

 昭和56年4月13日、京都市社会教育総合センター開館と同時に、京都市視聴覚センターを併設して開設。同年4月より教材貸し出し、5月より各種視聴覚教育研修講座を開始している。
 昭和62年から自作ビデオ教材の募集を開始し、それと共に学校教育関係者による自作教材作成グループが活動を開始。昭和63、平成元年度には全国コンクールでNHK会長賞を、平成3,6年度には文部大臣賞を受賞するなど、優れた自作ビデオ教材を生み出している。平成5年に社会教育総合センターから生涯学習総合学習センター(京都アスニー)に名称変更。映像メディアの進展に対応した機器整備を進めると共に、センター主催のビデオ編集講座の修了メンバーを中心として、平成7年に京都映像ボランティアを発足。各自作教材作成グループに作品制作を委託し、地域素材の映像化に力を入れている。

3.聞き取り調査の結果

(1)地域映像教材の制作状況
地域映像教材と制作状況
 地域について学習する小学校3・4年生が、京都市で作成している社会科副読本を使って学習を進めている。これに対応した映像教材が必要であるというニーズに応えて、昭和60・61年のビデオ作品コンテストをきっかけに地域映像を中心とした自作教材の収集を開始。また、その後の制作も教職員のグループが中心であったため、作成された教材ビデオは学校教育向けがほとんどである。

「塚原のたけのこ」
制作方法
 委託教材制作団体に地域映像教材作成を 委託するというやり方で映像を収集してい る。委託団体はいくつかあるが、その代表的なものは下記の2団体である。

※ユーニンクラブ
 昭和60年に小学校東山支部視聴覚主任 会のメンバーでスタートし、今までに「私たちの町たんけんシリーズ」等、22本の作品を制作し、教材として貸し出ししている。 学校向けの地域教材を制作している中心的 な団体である。作成された作品は、全国コ ンクールにも出品され、「大枝の柿づくり」 (昭和63年)「塚原のたけのこ」(平成6 年)は文部大臣賞を受賞している。


エントランスホールで放映されている映像ボランティア制作の「鴨川源流」
※京都映像ボランティア
視聴覚センターの主催するビデオ編集講座修了生(主に一般の方)の中から、「自分の技術をもっと向上させたい」、「何か京都に貢献したい」という方を中心に平成6年に結成、現在30名ほどのメンバーで構成されている。古都の名所や歴史的文化財・行事などの映像を作成し、京都アスニー1階ロビーで紹介している。
  自作映像教材のほとんどは、ユーニンクラブをはじめとした教職員のグループで、作品の企画・撮影・編集など基本的にグループの計画で進められている。しかし、企画にあたっては、制作グループから相談を受けたり、センターの方から作って欲しいものを示すこともある。また学校現場からは、以前に作ったものが古くなったので新しく作り直して欲しいという要望も多い。ビデオ撮影や編集に相当のスキルを持った技術職員がセンター開設以来勤務されており、各グループの指導援助を行っている。
  年間の制作委託費は、1本あたり10万円〜20万円で年間6本程度の作品を制作委託している(平成13年度は4本)。なお著作権についてもすべて視聴覚センターが所有している。自作教材が募集され始めた頃は、学校や個人で所有する機材を使って撮影や編集を行っていたこともあったが、現在ではセンター所有のDVによる撮影、デジタルノンリニア編集に変わってきている。

教材制作上の課題
 地域映像教材制作において下記の問題点をかかえている。  
そこで、センターでは今まで機材の貸し出しを行っていなかった市内の大学の映像研究会にも機材貸し出しを始めたり、機器使用講座を開いたりし、今後は大学生グループに制作委託を進めていくことを検討している。


(2)地域映像教材の提供・利用状況
提供方法
 教材制作委託団体によって制作されたビデオは、複数本貸し出し用にVHSテープに変換されている。他の教材と区別することなく、同等に扱われている。地域映像教材を利用できるのは、団体登録された学校関係の団体のみで、一般向けには貸し出ししていない。市内の学校に向けては搬送のための定期便が運行されており、希望の教材を電話でお願いして届けてもらうことができる。

教材保管室の様子
利用状況
 平成14年1月末現在、貸し出し可能な地域映像 教材は93本である。平成12年度のビデオ貸し出 し総数6,227本中、地域映像教材の貸し出しは578 本(約9.2%)であり、利用は多い方と言え るのではないだろうか。特に利用の多い教材は、「 京都の町の様子(平成6年)」−59本、「京野菜」「 大枝の柿づくり」(いずれも昭和63年)」−34本 である。
 
(3)地域映像教材の保管状況
 貸し出し用テープをマスターテープから複数本複製している他は、特に画像の劣化を防ぐための方策は行っていない。また、教材保管室も特別な空調はなされておらず、他の16ミリフィルムやビデオ教材と同じ保管状況であった。Uマチックで撮影された素材テープが倉庫にあるが、未整理の状態である。また、Uマチックのビデオ機材もあったが、最近動かしたことがなく、再生できるかどうかも不明であった。
   
(4)地域映像のアーカイブ化について
地域映像教材の相互利用について
 貸し出し規約に「貸し出しは京都市の所属団体のみ」という一項があり、現状では相互利用できない状態になっている。しかし、公共施設からの正式な依頼状があれば、対応していきたいとのことであった。今後、相互利用するためには、まず規約の改定を行わなければならないが、そのシステム(配送方法・経費・トラブルへの対応 等)がはっきりしてから対応していきたいとの考えであった。
 今回の調査では、全国自作視聴覚教材コンクールで文部大臣賞を受賞した「塚原のたけのこ」を視聴させていただいた。地域教材であるが、品質の優れた農産物を作っていこうとする農家の工夫や努力する姿が描かれており、小学校社会科の教材として、どの地域でも活用できると感じた。学校教材向けの地域映像教材が多いためか、京都に特有な題材だけでなく、「生産や品質を向上させるための人々のいろいろな工夫と努力」という観点で作成されたものも多く、これらについても他地域で十分活用できるものと思われる。

4.聞き取り調査を終えて