. 委員による提言

1.学習の交流と情報機器活用の関係について
山本 恒夫

 今回のような多地点間の学習の交流にテレビ会議システムを活用するときの方法については、社会教育でもある程度実験的な経験が蓄積されてきた。しかし、そこに他の情報機器を取り入れて活用することについては、社会教育の場合、まだあまり検討されてこなかったように思われる。今回のように、共通のテーマで多地点間の学習の交流を行う際に、交流を構成する要素となるのは、主に「話し合い」と「資料提示」であろう。「資料提示」には「資料作成」が必要であるから、それを入れると3つになる。

 今回活用したテレビ会議システムにあっては、「話し合い」と「資料提示」が同時にできるし、「話し合い」をしながら「資料作成」もできる。したがって、それらの作業にさまざまな情報機器を活用すれば、学習の交流を効果的に行えるはずである。しかし、その点についての経験が蓄積されていないので、まだあまり効果をあげていない。

 その原因はどこにあるかといえば、1つには、情報機器をばらばらに活用するだけで、それらをうまく関係付けることができていないところにあるように思われる。ここでは、その点について1つの提言をしておくことにしたいと思う。

 今回の実践研究に活用した情報機器を見てもわかるように、機器そのものは機能の充実が図られ、改良が進んでいる。したがって、その機能にあった活用をするのであれば、1つひとつはいずれも優れた機器であり、それなりの成果をあげることができる機器である。ただ、それらはいずれも独立した機器であり、機能であって、現在の段階では、人間がそれらを有機的に関係付けない限り、機器の側が自ら進んで他の機器との有機的な関係を作り出すことはしない。

 しかし、われわれは、ともすればそのことを忘れがちで、いくつかの機器を併用的に活用するときには、いつの間にかそれらの機器が勝手に他の機器と結合して、うまく機能してくれるのではないかという錯覚に陥りやすい。そのため、多地点間の学習の交流を行う場合でも、あまり機器間の関係について考えもせずに、学習の交流を行ってしまい、思ったほどの効果をあげることができないままに終わってしまうことがかなりある。

 それではどうすればよいかということになるが、他地点間の学習の交流であっても、何らかのプログラムを作り、その中で情報機器を活用する場合には、機器の関係を検討することにしてはどうであろうか。

 たとえば、「話し合い」、「資料提示」、「資料作成」にそれぞれ情報機器を活用するとしてみよう。ここでは、「話し合い」に活用する情報機器は単に『話し合い』で示すことにし、「資料提示」、「資料作成」それぞれの情報機器も『資料提示』、『資料作成』と表すことにしておきたい。そうすると、現在のところ、他地点間での学習の交流における『話し合い』、『資料提示』、『資料作成』は、単にそれらを組合せて使っているにすぎないことが多い。

それを、
 『話し合い』組合せ『資料提示』組合せ『資料作成』
と表すことにしてみよう。これは、『話し合い』に『資料提示』を組合せたり、『資料作成』と『資料提示』を組合せたり、あるいは3つを組合せて使ったりというように、ただ単に並べて使うだけのことを意味している。これは一番基本的な関係である。

 これを少し工夫して、結合して使うことや順序を考えて使うことにすれば、学習効果はかなり良くなるように思われる。

たとえば、
 『話し合い』結合『資料提示』
というパターンを考えてみよう。『話し合い』と『資料提示』の結合というのは、「話し合い」をしているときに「資料提示」を同時に行い、それらの間を行きつ戻りつするように機器を使うことである。このような関係付けは、学習活動を一段と活性化させるに違いない。

 このような関係については、以下に示す例など、さまざまなパターンが考えられる。
  『話し合い』結合(『資料提示』結合『資料作成』)
  (『話し合い』結合『資料作成』)結合『資料提示』
 この他にも、一方が他方を含んでいるという包含の関係を用いれば、
  『話し合い』結合(『資料提示』包含『資料作成』)
のようなことも考えられる。これは、『資料提示』のシステムの中に『資料作成』を組み込んで使う場合である。

 これらは、そう複雑なことではないが、実際には機器によってうまく結合できないこともあるであろう。そのようなことがはっきりすれば、ソフトからハードの方へ、改良についての要望をすることもできる。

 しかし、いずれにせよ、交流プログラムの中でこのような関係付けを行うだけでも、多地点間の学習の交流は一段と進むのではないだろうか。