. 海外訪問調査

英国調査報告
渋谷 英章

6.Open University(オープン・ユニバーシティ)

〔訪問日〕2004年3月4日
〔面談者〕Mr. Domonic Newbould, Visitor & Community Relations Manager(写真9)

写真9 
Domonic Newbould氏
写真10 
教材パッケージ(地質学の教材なので岩石見本も入っている)
写真11
パッケージ中のCD-ROMソフトを起動させた画面(1)

写真12
パッケージ中のCD-ROMソフトを起動させた画面(2)
 オープン・ユニバーシティは1971年に開設されて以来200万人以上の学生が学んできており、2004年度には20万人の学生を擁することになる。またUK外の学生も45,000人にのぼる。学生のプロフィールには、@年齢は20歳から40歳が中心であるが、最年少で9歳、卒業生の最低年齢は17歳、最高齢は90歳代である、A現在は18−24歳の年齢層の学生が増加している、B40%の学生がすでに学士号を取得しており、2つ目の学士号か、修了資格の取得を目的としている、B40%の学生は、従来の学校制度における大学入学資格を満たしていない、C現在約10,000人の障害を持つ学生が在学している、D75%の学生が就業している、E入学生の80%が1年後の最終試験に合格している、などが示されている。このようなプロフィールからはまさにすべての人に開かれたオープンな高等教育機会を提供していることが窺われるが、オープン・ユニバーシティにとってはさらに、費用対効果の高い、また質的レベルも高い教育を提供しているという点での自負もあるようである。オープン・ユニバーシティは教育レベルにおいて全英で上位5大学の中に入り、研究活動でも上位25位以内に位置する。オープン・ユニバーシティの活動は、@教育、A研究、B教材等の作成、C学生支援の4つの領域で構成されており、それぞれの活動領域で質の確保を図っている。500〜600名のフルタイムの大学院学生も在籍しており、多くの研究補助金を獲得している、教員は教育プログラムのデザインと研究に専念しており、学生の学習サポートは専門のスタッフが行っているなど、研究面でも充実し、質が高いという点が説明の中で強調されていた。

 従来実施されていたBBCと連携してテレビ、ラジオ番組を放送し、受講者がそれを視聴しながら学ぶという学習方法は、一部のプログラムに限定されてきている。今後はテキストと学習ガイド、CD−ROMなどで構成される教材パッケージ(写真10〜12)を供給し、このパッケージを使用した学習に、オンラインあるいは対面の個別指導、さらにオンライン会議への受講者の参加を加えたシステムをすべてのコースに採用していく方針である。すなわち、放送というチャンネルで学習プログラムを提供する大学から、インタラクティブなICT教材を使用した個別学習と、オンライン・チュータリングやオンライン会議によるチューターと受講生、あるいは受講生同士のインタラクションによる学習システムの大学への転換がめざされているのである。なお、オンライン会議にはFirst Classという会議ソフトが使用されている。そして、このような教材パッケージを作成するために、アカデミック・スペシャリストから、マルチメディア・プロデューサー、出版編集者、グラフィック・デザイナー、ソフト作成者、さらには学生支援を行うチューターまでもが加わるコース作成チームが編成される。