.国内における最新の学習資源提供機器利用調査

モニター試用実践事例調査(2)
〔教育機器・システム〕 《映像サーバ》
〔ソフトウェア〕 《映像ソフトウェア》

デジタル映像資料を選択・活用して、観察力を養い感性を高める

(1) 機器機能
   デジタル映像資料を簡単にWeb上に提供できるシステム・ソフトウェア。これまでビデオカメラ等で撮影して蓄積してきた資料を、コンピュータに取り込み、子どもが簡単に情報を視聴できる。ビデオでは、保存テープの選択や、そこから必要な映像を探す作業が煩雑であった。しかしこのソフトでは、コンピュータに情報を取り込む段階で情報の整理ができ、利用段階で短時間かつ簡易に必要な情報を得ることができる。子どもの限られた操作能力であっても、情報を視聴する活動が簡易に行え、情報の内容を深く読み取ることに指導の重点を置くことができる。子どもの情報の選択・活用能力を高め、観察力や感性を養うのに最適である。

(2) 教育機関の概要
   東京都品川区立上神明小学校 全校児童238名。
《情報環境》  
パソコン整備状況  
パソコン室 児童用パソコン 20台 

教師用パソコン 1台
各教室    児童・教師用パソコン  1台
職員室 教師用パソコン     7台
  サーバ 2台
LAN環境 各教室・特別教室にLAN配線済み
各教室、音楽室、理科室、図書室、保健室にパソコン設置済み
設置したすべてのパソコンからネットワーク経由でファイル共有、
インターネット接続可能


(3) 活用目的
   デジタル情報の選択・活用する活動を通して、それらの能力や技能を高めるとともに、観察力や感性を養う。

(4) 活用概要・対象者
 
音楽:単元「音楽会の曲をもう一度聴こう」5年1組36名を対象。使い方を5分ほどで覚え、喜んで鑑賞していた。キーワードを入力すると、視聴したい情報の絞り込みを行うことができる(写真1)。
写真1・子どもが視聴したい曲を選んだ画面

(5) 実践内容
   校内で行われた音楽会のビデオを、曲ごと学年ごとに保存し、児童が自由に選択して視聴できるようにした。音楽会後、もう一度聴いてみたい演奏や合唱を選ばせ、再度鑑賞させることで、曲をより深く味わったり感動を呼び起こしたりさせ、心に残ったことを強調した鑑賞記録を作成できるよう指導した。
 1曲ごとにデータを整理したので、視聴時間は長い曲でも5分程度であった。鑑賞といっても、はじめから終わりまで通して鑑賞するだけではなく、心に残った部分を繰り返し鑑賞したり、一緒に歌ったりしていた。児童は、心に残った部分をより深く味わおうと自分なりの方法で鑑賞活動をしていた。

(6) 学習効果
   ソフトウェアの使い方については、事前に5分ほど説明をした。児童は、一度で操作方法を覚え、自在に操っていた。画面上に表示される言葉には、子どもには難しいと思われるものもあったが、児童は、教師の説明をよく覚えていて、混乱なく使用することができた。児童は、インターネット等を利用して情報を閲覧・収集することには慣れているが、音声付きの動画という情報にふれることはまだあまりない。自分たちや同じ学校の仲間が出場している音楽祭の映像を鑑賞できたときには、どこのパソコンからも歓声があがった。それは、音楽会の感動が目の前によみがえってきたからであり、映像の持つ力の大きさを教師が実感したときでもあった。



写真2・子ども同士の教え合いが活発に行われた



写真3・皆で感想を言い合いながら鑑賞

 使い方の定着が不十分な児童は、お互いに教え合って使う姿が見られた(写真2)。教師が説明するよりも優しい言葉で的確に教えていることに驚きを覚えた。マウスを動かしながら説明をして理解を促していた。
 映像を鑑賞した児童からは、「1年生の演奏のピアニカの音がとてもそろっていてよかった。」「自分たちの演奏を客席で聴くのは、演奏しているときと全然違って、いろいろな音が聞こえてきていた。みんなにはこんな風にきこえることがわかった。」(写真3)など、これまでの鑑賞指導からは得ることのできなかった、新しい視点からの感想が多く出された。児童が主体的に鑑賞活動を行える学習として、また、鑑賞活動の新しい事後指導のあり方として、今後の広がりが期待できる。

(7) 利用可能な活動と利用上の留意点
   動画と音声資料を活用し、観察力や感性を養うといった観点から、意図的に撮影された映像を使うことが好ましいといえる。利用可能な活動例として以下に記しておく。
  教科学習での活用
    ・国語 朗読 よい発音の口型と抑揚の付け方/漢字 正しい筆順での漢字の書き方/ 言語 正しい辞書の引き方
・社会 資料の読み取り方/研究発表の蓄積/児童に見せたい資料の蓄積
・算数 定規やコンパス等の用具の使い方/計算の仕方
・理科 実験器具の使い方/観察時の視点の持たせ方
・音楽 リコーダー等の楽器の演奏や手入れの仕方/演奏や合唱の鑑賞
・図工 表現技法のポイント
・家庭 包丁の使い方/調理のこつ
・体育 各運動における自分のフォームの振り返り/各運動における模範的なフォームの学習
  教科外活動での活用
     ・特別活動 学級活動・児童会活動等での各活動のポイント/植物の世話の仕方
 ・学校行事 運動会や学芸会などでの演技の集積
 活用の範囲は広範であり、全てを記すことは困難である。
 どの活動でも大切なことは、何のために映像を使うのかを明確にしておくことである。子どもの技能の向上のためなのか、観察力を高めるためなのかなど、各授業での位置づけを明確にして、効果的かつインパクトのある学習計画の立案が必要である。また、映像を簡単に見ることができるだけに、児童が映像資料を安易に使ってしまう恐れもある。一つひとつの映像の持つ意味を考えさせ、最小限の情報で、しっかりと情報を読み取らせ、自分の考えを持たせるような指導が不可欠である。

(8) 報告者
 
 東京都品川区立上神明小学校校長 天野 和雄
教諭 細川 猛彦

(9) 資料提供
   株式会社フォトロン http://www.photron.co.jp
 機器型名 映像ナレッジマネジメントシステムPower Index