訪問調査施設名 篠山市視聴覚ライブラリー(兵庫県)

回答者 小林 康弘(篠山市視聴覚ライブラリー 主査)
  安井 聡博(篠山市視聴覚ライブラリー 主事)
調査担当 谷田部 智(宇都宮市立視聴覚ライブラリー 副所長)
  久永 直人(財団法人日本視聴覚教育協会)


1.施設の概要

名称: 篠山市視聴覚ライブラリー
所在地: 〒669−2292 兵庫県篠山市杉7−1(篠山市教育委員会内)
電話: 0795−94−1134 FAX:0795−94−3590
交通: JR篠山口駅下車徒歩約5分
E-Mail: syougai@city.sasayama.hyogo.jp
HP: http://edu.city.sasayama.hyogo.jp/library.html
設置者: 篠山市 設置根拠:条例
組織: 視聴覚ライブラリー係長1名、主査2名、主事1名
人口規模: 要覧に示されている規模E(指定都市以外で対象地域内の人口が5万人未満)
教材保有数: 16ミリ映画 187本、 録画教材 2,527本(市販) 221本(自作) 他

2.沿革

 昭和47年度に多紀郡視聴覚ライブラリーを開設,8ミリ映画制作などを始める。昭和56年度には16ミリ映画制作を始める。昭和59年度に多紀郡視聴覚ライブラリーを解散し、西紀・丹南町視聴覚ライブラリー、篠山町視聴覚ライブラリーを開設。平成11年度篠山市誕生と共に、西紀・丹南町視聴覚ライブラリー、篠山町視聴覚ライブラリーを解散し、篠山市視聴覚ライブラリーを開設。
 現在は、地域の伝統行事・歴史・記録などの市内の映像資料、市販のビデオ約1,800本の貸出し、デジタルビデオカメラを使い、地域をテーマにしたドキュメンタリーやニュース、学校で利用されるビデオ教材の制作を行っている。
 さらに、ビデオ映像の編集の指導や補助、「コンピュータ講座」「ビデオ講座」などを開催している。

3.聞き取り調査の結果

(1)地域映像教材の制作状況について

制作している地域映像教材
 多紀郡視聴覚ライブラリーの時代から郷土に密着した学習教材を制作。現在は、広域化した篠山市民の相互理解を深める目的で、市内の情報をビデオ化し、映像情報として各自治会長に配布する。内容は、村おこし・伝統行事・イベント・学校行事などの身近な地域の話題、歴史・文化・風土などの地域固有の土地に根ざした映像の記録。
 平成13年11月現在、約67本の地域映像教材(メディアはVHS、DV)を所有する。

制作方法
 多紀郡視聴覚ライブラリーの時代は主に16ミリフィルムで、その後VHSビデオになる。
 現在は、業務用デジタルカメラで撮影、電子編集機・ノンリニア編集で制作している。
 制作は視聴覚ライブラリー職員4名が担当し、ナレーターはボランティアに協力してもらう。
 

地域映像教材の制作意図
 「地域のあらゆる変化を記録し後世に伝え残す」「生涯学習教材として地域を再認識してもらう」等の目的で制作している。

地域映像教材を制作する場合の課題
 課題として、情報の発掘に予想以上の時間がかかること。その情報をどのように提供していくかを検討する企画段階の時間がとれないことなどがある。撮影・取材、編集にも相当な時間がかかる。

(2)地域映像教材の利用状況について

利用状況

主な利用者,利用場所

利用促進のための手立て

利用者の地域映像教材についての意見・感想

地域映像教材を利用する上での課題


(3)地域映像教材の保管状況について

古い地域映像教材の利用の可否
 制作年度の古い教材は,現時点ではかろうじて使用できるが、その中で利用頻度の多い作品はコピーをとって貸出す。8ミリフィルム教材は現在映写機が製造されていないため、老朽化した機材の動作に不安がある。映写機をオーバーホールして対応している。フィルム素材の古い映像は、順次デジタルコピーをとり保存をしている。

利用価値のある教材の保存方法と今後の対応
 保存については、温度・湿度が管理されている保管施設がないため、密閉した容器に取材したマスターテープをすべて保管している。貸出し用テープが損傷した場合は、このマスターテープで編集をやり直すことができると考えている。現時点では、DVCCAMにオリジナルを残し、VHS・DVDにコピーする方法もとっている。



(4)地域映像教材のアーカイブ化について

地域映像の相互利用の必要性
 地域性のある題材はすべて貴重な教材となる可能性があり、地域映像教材の相互利用を積極的に進めるべきと考えている。

映像教材を相互利用する上での課題

相互利用を進めるとしたら、どのようなシステムにしたらよいと思うか。
 閉鎖されたシステムではなく、全世界に送受信できるグローバルなネットワークで展開すべきであると考える。FTTHなどの高速インターネットを使ったビデオ・オン・デマンドが理想。さらに,日本語に限定せず、あらゆる言語に対応した映像情報が理想と考えている。

4.聞き取り調査を終えて

 篠山市視聴覚ライブラリーの特筆すべきことは、映像教材制作に約30年の長い歴史をもち数多くの貴重な地域映像資料を所蔵していることである。さらに、現在も村おこし・伝統行事・イベント・学校行事などの身近な地域の話題、歴史・文化・風土などの地域固有の土地に根ざした映像の記録が続けられ、広域化した篠山市民の相互理解を深める目的で配布されたり、即時性のあるものはインターネットで配信されている。平成13年7月に開始されたインターネット配信は好評で、市民はこれらの貴重な映像資料を地域情報、また教材として有効に活用している様子が伺える。学校教育では、平成14年度から実施される学習指導要領で「中学校社会地理的分野に、いくつかの都道府県を取り上げ地理的事象を見いだして追求し、地理的特色をとらえさせる。」「小学校社会に、身近な地域や市について調べる。」などの内容があり、篠山市の伝統行事・歴史・文化等の地域映像教材をアーカイブ化すれば、有効な資料となると思われる。生涯学習の気運の高まる中、FTTHなど高速インターネットも整備されつつあり、いつでもどこでもこのような映像が見られれば、社会教育でも有効利用されると思われる。広く公開する場合などは、著作物の権利関係を明確にするという課題もあるが、このような課題を早く解決し、貴重な地域映像を広く教材として使うシステムの早い構築の必要性が、今回の調査で改めて確認できたところである。